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自治体の自主性尊重を 経済・沖縄振興 宮城和宏氏(沖国大教授)<2024衆院選・論点を読む 識者の見方>3


自治体の自主性尊重を 経済・沖縄振興 宮城和宏氏(沖国大教授)<2024衆院選・論点を読む 識者の見方>3 宮城和宏氏
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―県経済の課題は。
 「短期的には原材料高、燃料費高騰などで企業がコスト増に苦しんでいる。価格転嫁できればいいが、沖縄は三次産業が多く、難しい状況にある。人手不足で賃金の上昇もあるが、中小企業などでは賃上げも難しい。実質賃金が上がらなければ消費も低迷する」
 「中長期的には県民1人当たりの所得上昇が貧困問題の解消につながる。沖縄経済の大きなウエートを占める観光産業で長期滞在化や高付加価値化、需要平準化、正規雇用の増加といった観光の量から質への転換が求められている。宮古島などでは本土系や外資系による開発が相次ぎ、バブル化している。オーバーツーリズムの問題も出てくることが予想され、地元住民主体となった開発が必要だ。県選出国会議員は何らかの規制を検討する必要があるだろう」

―県民所得最低の要因は何か。
 「直接の要因は労働生産性の低さ。沖縄は島嶼経済で製造業が育ちづらい。輸送コストも生じるほか、規模の経済が働かない。生産性が上がらないということは所得も上がらず、貧困といった問題につながっている。島嶼経済である地理的事情、沖縄戦と米軍統治下を経験した歴史的事情、現在も残る米軍基地と言った社会的事情を克服することが求められている。地理的事情を克服するには、エンタメなどコンテンツ産業のプラットフォーム化や高付加価値化、グローバル企業創出のための産業政策などを県選出国会議員は打ち出してほしい」

―一括交付金の現状と評価は。
 「内閣府を通じて一括計上されることは予算編成が政治案件化しやすい。一括交付金は減額が続いているが、市町村へ直接交付する特定事業推進費は伸びている。国の力が強くなって、予算編成に偏りが生じている。島嶼経済など、沖縄を取り巻く特殊事情がある中、振興制度自体は必要だ。国会議員には県や市町村の自主性を尊重してほしい」