【島人の目】殿堂で米エンタの粋


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 機会があって、オペラ座(ガルニエ)の一等席を手に入れることができた。これまでは、どんなに身を乗り出しても、舞台全体は見えない、料金の安い上階席だった。
 ところが私は、一等席に座り、すぐにあることを後悔し始めた。どうして、カメラを持ってこなかったのだろうか。周りの人はみなデジカメ、携帯に付いたカメラで、有名なシャガールの天井画や金ぱくが施された装飾を「カシャ、カシャ」「パチ、パチ」撮っているではないか。「バカ、バカ」と私は最後まで自分自身をののしった。
 パリにはオペラ座が2つあり、前述のオペラ・ガルニエは19世紀末に完成。ガルニエは、設計者の名前である。新しいオペラ・バスティーユは1990年にオープンした。歴史を感じさせるガルニエと超近代的なバスティーユ。どちらでバレエ、オペラを見てもそれぞれのよさがある。
 今年は、モーツァルト生誕250年ということで、年明けから、それに関する演目が並んでいる。すでに両オペラ座の06年のスケジュールは決まっているが、時々、なんの演目もない日に、海外からの大物アーティストのコンサートが入ることがある。今年はガルニエで、なんとライザ・ミネリである。
 「なんと」と書いたが、若い人はその名を聞いてもピンとこないかもしれない。オスカーを取ったこともあるアメリカのミュージカルスターだ。ハスキーでいて、よく響く彼女の声はゴージャスそのものだ。
 古典の殿堂で、アメリカンエンターテインメントの粋を見るのもいいかもしれない。
(又吉喜美枝、フランス通信員)