【キラリ大地で】<アメリカ>スシレストラン「カツヤ」経営 上地勝也さん(47)


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 「小さいころからの夢は、いつか社長になること。あこがれの国だったアメリカで、その夢を実現したいと思っていた」
 ブームが過ぎ去り、すっかりアメリカの食文化として定着したすし。人気テレビドラマでもスシレストランが登場する場面が珍しいものではなくなった現在、特徴のない店が次々と淘汰(とうた)されていく中、和食の概念から離れた独創性に富んだメニューで、新たなすしブームの火付け役として活躍しているのが上地勝也さん=(47)=那覇市出身=だ。

 上地さんは大阪の辻調理師専門学校を卒業後、東京や沖縄の一流レストランなどで修業を積み、1984年に初渡米。ロサンゼルスのレストランなどでチーフシェフを務めた後、それまでためていた自己資金を元に97年、独立。ロサンゼルス近郊スタジオシティーにレストラン第1号店を開業した。
 開業資金を払い込んだ後に、手元に残ったのはわずか800ドル。「立地条件の悪さを克服するには、味で勝負するしかない」とアメリカ人の趣向を徹底的に分析し、「白いご飯に魚」という従来の概念から離れ、新しいメニューの開発に専念した。フォアグラやハラペーニョ、梅酒のソースといった斬新さが評判を呼び、人気アイテムはたちまち他店も取り入れるなど、業界のリーダー的存在として幅広く認知されていった。
 固定客には、キャメロン・ディアスなどハリウッド映画俳優らも多数。スーパースターと肩を並べた上地さんの写真は、一流ファッション雑誌などにも登場している。
 シェフとして活躍する一方で、上地さんはビジネスマンとしても才能を発揮。2004年5月にロサンゼルス郊外エンシノに第2号店をオープンさせたのに続き、今年はロサンゼルスの高級住宅地やニューヨークにも出店、さらに来年は、ハリウッドやマイアミへの出店も既に決定している。
 全米のレストランを評価する業界専門調査誌「ザガット」で、06年度最高点を獲得。将来性に目を付け、投資したいという企業や個人投資家らも数多い。
 「最近、下積み時代に将来の夢を書き記したノートを読み返してみたら、ほとんど実現していた」。真和志高校を中退した時や、初めてアメリカで人種間のあつれきを経験した時も「料理人でもいつか社長になれる」という信条を守り抜いた。
 「夢は絶対にあきらめてはいけない。あきらめた時点ですべて終わってしまう。あきらめずに努力すれば、いつか必ず実現する」。文字通り腕一本で挑んだ勝負で、子供のころからの夢を実現させた上地さん。株式上場するというこれからの夢に向かって、大きな一歩を踏み出している。
(平安名純代通信員)
(随時掲載)