【交差点】南方気質はおばー気質


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 インドネシアに住む日本人が「納得できない」とよく話題にすることがある。「ティダ・アパ・アパ(ドンマイ、気にするな)」という言葉の使われ方である。
 メードさんが大事な皿を割る。叫ぶ奥さまに対して、メードさんは「ティダ・アパ・アパ」。機械を壊したことを怒る上司に対し、当の社員は「ティダ・アパ・アパ」という感じである。
 しかし日本人的にはそれが理解し難い。「ドンマイ、気にするな」は被害者が言う言葉であり、加害者である彼らが言うことではない。どういうつもりだ!と、燃え上がった怒りに、さらに油が注がれてしまうのだ。
 度重なるそんな議論の中、ある先輩が教えてくれた。「彼らの思考はマイペース、いい意味で自分中心」、皿を割った時も、機械を壊した時も「自分は大丈夫、けがをしていない」、それを伝えることが優先事項なのであるから、誤解してはいけないというのだ。なるほど、真偽の程は別として、そう考えると少し怒りが収まる気もする。
 でも、マイペースと聞いて僕には、思い当たることがあった。沖縄のおばーである。食堂で注文したそばを持ってくるのに、おばーの指が入っている。「おばー指が入っているよー」と文句を言ったつもりなのに「大丈夫、熱くないよ」という答えが返ってくる。そんな笑える状況に思い当たる島んちゅは、少なくないのではないか?
 南方気質は、おばー気質。はるか南半球のインドネシアから太平洋の黒潮に乗ってやってきたのであろう。でも、おばーにそう言われたなら、少し大目にみようかとも僕は考える。そんな穏やかな気持ちで、インドネシアの人々にも、接していけたらと思う。
 (太田勉・インドネシア在、企業経営)