【交差点】書籍の没収=一国二制度ですよ


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 仕事で中国福州に住み、沖縄との行き来にパスポート・ビザを携帯するのが常となってしまった。しかも年月がたつにつれ出入国の際の入管や税関審査も以前ほど緊張感もなく手続きを済ませ審査通路を出てしまうのである。

 だが、今回は違った! 香港で購入した書籍の没収である。しかも、空港内売店用の袋の中からの摘発となり当局と押し問答となった。
 問題の図書は「毛沢東=英語版」であり、しかも香港(中国)での購入であることから「なぜ没収なのか? 香港空港で買ったのですよ!」と没収の理由が理解できず押し問答が30分ほど続いた。答えは「中国は一国二制度です。香港で購入しても、この本は持ち込めません」との返事で、最終的には住所、氏名等をサインし没収となった。
 10年ぶりに緊張感が極度に達し、空港から市内への帰路、あらためて中国社会の動きに思いを巡らした。来る8月には北京オリンピックの開催、また多くの国内問題の発生などでその対応に内外の関心も高まる今日このごろである。学生ビザの取得が普段と違って厳しくなったことや、さらには労働ビザ取得が出身国における在中国領事館で手続きを行う(普通は中国国内でも可能である)など、いつもと異なることも起きているのである。
 改革開放の政策を実施してこのかた、以前にもまして中国とて国際社会の動向と無関係であるはずがなく、特に世界経済のリード役にまで発展した今日においては国内のみならず国際関係でもさまざまな問題を惹起(じゃっき)するなど、大変な時期に違いない! でも、没収の理由は知りたい。
 (仲宗根信明・県産業振興公社福州事務所長)