【島人の目】ワイン市


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 パリでは年に2回、春と秋に大規模なワイン市がある。ワイン好きにはたまらない催しである。会場の入り口でチケットを係りの人に渡すと、それと引き換えにグラスが与えられる。約500のワイン業者のカウンターが並ぶ会場は圧巻だ。
 もらったグラスでワイン飲み放題(ワインにこんな言葉は似合わない)、いや、好きなだけ試飲できる。
 お目当ての銘柄、あるいは試してみたかった地方のカウンターへ行く。生産された年が明記されたメニューがあり、「これを試してみたい」と言うとグラスに少しだけついでくれる。いいワインが出た年だと、一本の値段は薄給の身には簡単には買えないが、味見はできる。同じ銘柄でもやはり年によって味が微妙に違うなんて書くと、いかにも「通」ぶっているようだが、その場で比べてみると素人でもだいたい分かる。
 この春行ったワイン市では、ブルゴーニュの2000年ものにおいしいものがあった。口に入れ、「あっ違う」と思った。味がしまっていて、豊かな土と太陽の恵みという感じがした。そこの業者のおじさんは、これまた味のある顔をしていて、その人に「ほかを回って、また来ます」と断って、別のところに行った。
 同じセリフをいくつかのカウンターで言ったが、結局その00年ものを買った。
しかるべきときにしかるべき料理と味わおうと私の部屋のワイン貯蔵庫(机の下)に大事に保管している。
 (又吉喜美枝・フランス通信員)