【交差点】もがき苦しむ


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 8カ月を過ぎても次男の時亜(J―YA)は、まだハイハイができない。毎日、両手足をばたばたさせながら前進できずに、もがき苦しんでいる。

 石油価格高騰、株価下落、消費意欲の低下は世界中の先進国で例外なく起きており、シンガポールでのビジネスも非常に苦しい状態になってきた。景気が落ち込むことは去年中旬から予想していたため、中心部の大型モールは狙わず、穴場的で可能性が高い、空港と大型観覧車に出店したが、予想以上の勢いで景気が低迷しており、正念場である。
 政治が安定していて、経済が成熟しているシンガポールは1998年のアジア危機でもそれほど深刻な影響を受けなかった。今でもインド、中国、東南アジアの中心、先進国として多くの永住希望者が永住権を得て人口を増やして人材を引き寄せている。長期的には必ず持ち直すと信じているが、短期的な影響は避けられず、かなり厳しい状態である。
 手足をばたばたさせて、もがき苦しんでいるJ―YAを見て思った。「俺(おれ)と同じで、もがき苦しんでいるな」。だがよく見ると本当に少しずつかすかにだが、確かに前進している。起業して5年が過ぎた。これまで試練らしい試練も経験せずに順調に成長してきた。ここで試練を経験することにより、「生き残るために、死に物狂いになり、試行錯誤しながら、知恵を絞り出し、前進していく」会社は、人間は、そうやって成長していくものだと、J―YAを見て思った。会社もJ―YAもやがては立ち上がり、素晴らしい成長を遂げていくのである。そう考えれば試練はウエルカムだ。
 (遠山光一郎・シンガポール現地法人社長)