【キラリ大地で】ブラジル/具志恵さん(28)糸満市出身


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ブラジル沖縄県人会の事務所を手伝う具志恵さん=ブラジルのサンパウロ市

 移民100周年を迎えるブラジルで歌いたい。その願いがかなって、具志恵さん(28)=糸満市出身=の歌声がサンパウロ市のアニェンビー国際会議場に響き、2000余人の聴衆を魅了した。

 ブラジル日本人移民100周年記念行事の一環として催された「日本文化週間」(6月14―20日)の「沖縄文化フェスティバル」で、相場ひとみさんのピアノ伴奏に合わせて「てぃんさぐぬ花」「安里屋ユンタ」「あん美らさ」「豊年音頭」を歌い上げた。細身で小麦色の肌、ストリートダンスを踊っていたしなやかな体でのパフォーマンスがブラジルにマッチする。何よりも沖縄の熱い思いを伝えてくれるその声が一番の魅力だ。
 今年3月に来伯。現在、沖縄県人会の事務局を手伝いながら、精力的にブラジル各地を歩き回っている。5月の「創作芸団レキオス」ブラジル公演では、ブラジリア、マリリアの公演に出演した。琉球民謡保存会や琉球民謡協会ブラジル支部の催しにも出演。地元の音楽グループとの共演など積極的に活動している。
 高校卒業後、米国へ3カ月留学。その後の2年間は東京で、ダンスと黒人ソウルミュージックの歌手になることを夢見て下積みの生活。その間に沖縄を強く意識するようになり、帰郷。それからは沖縄の音楽にこれまでにない興味を持つようになり、長間たかお・アヤメバンド4代目メンバーとして活動しながら、三線と太鼓、民謡、古典音楽を習い始めた。
 2005年に八重山古典音楽コンクールで新人賞、翌年には優秀賞を受賞。再び上京して沖縄料理店を回りながら民謡歌手としての活動を開始した。昨年「MERRY」の芸名で、9曲入りのアルバム「琉星」をリリースし、3カ月で最初の1000枚を完売した。
 ブラジルに来たきっかけは、昔は良かったという親の世代の話に「それでは今の時代に消えかけているものは何だろう」と考えていた時、東京で師事していた伊良皆高吉さん(元沖縄県議会議長)から「ブラジルのウチナーンチュは昔のウチナーグチを話している」と聞いたからだ。ウチナーグチは聞けるがうまく話せないという恵さんは民謡を歌いながら、常々きれいなウチナーグチで話せるようになりたいと思っていた。100周年を迎えるブラジルで、ウチナーグチを習い、ウチナーンチュの心を歌いたい。その思いが1年間のブラジル滞在につながった。
 8月には、テレビ東京で恵さんを取材した番組が放送される予定で、先月、その収録も終えている。週に1度、語学学校でポルトガル語を学んでいる恵さんは「沖縄の文化を通して世界中の人と話せるのがうれしい。言葉は目に見えなくても相手に優しさや感動を与えることができる。ウチナーグチでもポルトガル語でも、たくさんの人たちが笑顔になれるような言葉を勉強していきたい」と抱負を語った。具志さんは自身のホームページ(http://www.gushimegumi.com)も持っている。
(与那嶺恵子通信員)