【交差点】掘り当てた大連の名湯


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 5年ほど前から最近にかけて現地の新聞広告で幾つかの温泉施設が開業したことを知り興味を覚えていた。大連の温泉掘削の記事を、わが社が発行する観光情報雑誌に掲載することにした。広告の内容をよく見ると、日本の技術が使われていたので、かかわった技術者の方に連絡を取り「大連名湯物語」の執筆を依頼した。

 原稿によると、大連の地質は6億―10億年前の堆積(たいせき)岩が主体であり温泉水が湧出(ゆうしゅつ)しにくい。
 地下1000メートルを超える場所の温泉脈を見つける調査は、専門家でも結果を出すまでには2カ月が必要であり、その難易度は年末ジャンボ宝くじで組違い賞を当てるくらいの確率、なのだそうだ。
 製造コストの高い日本の技術を物価の安い中国で提供するということは、中国人にとっては日本の10倍くらいの想像を絶するコスト高になってしまう。調査、掘削中は中国人依頼者の不安が技術者にも感染して温泉脈を探し当てるまで、きりきりと胃が痛む毎日なのだそうだ。
 地下の深層部の温泉脈で、気の遠くなるような歳月で圧縮され、掘削と同時に大気中に噴出する温泉水は、泉質の皮膚への浸透度が高く、健康や美容に大きな効果を発揮するのだと熱く語る技術者たち。
 大連には現在、彼らの技術協力で開発された旅順の老鉄山温泉、市内の温泉プール付きマンション、開発区のホテル業者が管理する温泉など5本ある。依頼者の期待する経済効果と温泉掘削に賭ける技術者のロマンが、大連の温泉開発を可能にし、市民にとっても名湯が身近な存在になりつつある。
 (池宮城克子・新ウチナー民間大使、観光情報雑誌編集者)