【島人の目】ヒーロー


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 血わき肉躍る、サッカー・ワールドカップが始まる。オリンピックを軸に回っていた私の人生も中間年にW杯が入り、がぜん、忙しく、楽しくなった。
 日出づる我がジャポンはもちろんのこと、住まわせてもらっているおフランス、南米大陸のもう一つの雄、アルゼンチン(親せきがいる)、美形ぞろいのイタリア、隠れた実力派アメリカ、と私が、今回応援するのはこんなところか。
 フランスは一時代を築いたヒーロー、ジネディーヌ・ジダンがこの大会を最後に引退を表明している。今、パリでは彼のドキュメンタリーが公開されている。
 ジダンの前のサッカーの英雄がミシェル・プラティニ。彼がいた時代、フランスはW杯では優勝はできなかったが、1984年のユーロカップは制した。引退してからもプラティニはヒーローで、92年、フランスのアルベールビル冬期五輪で聖火ランナー、98年のフランスW杯で組織委員長を務めた。
 彼は、現役時代、サッカーの国際試合での国歌斉唱で、「ラ・マルセイエーズ」を歌わなかったことでも有名だったらしい。「サッカーの試合は友好の場であり、戦いの場ではない」というのが理由だ。国歌の歌詞は、残酷な戦いを表している。
 国の代表といえども、自分の信念を曲げない。そして、“おとがめ”なし。この話を聞いたとき、日本ならどうだろうか、と、思った。
(又吉喜美枝・フランス通信員)