【島人の目】パリで食べる豆腐


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 本紙文化面で連載している「おきなわ豆腐ロード」をおいしく読んでいる。私も豆腐は大好きだ。沖縄の木綿豆腐は世界一、と信じて疑わない私であるが、ここグルメの都・パリでも「これが豆腐だ」と納得できるのを味わうのは難しい。
 初めてパリで豆腐を食べたのは8年前。当時のルームメートがラーメンに細かく切って入れていた。すごくおいしそうに見え、さっそく中華街で豆腐を手に入れ、まねした。
 さて、口に入れると、ああ、堅い。少しかむだけで、歯形がつきそうだ。そして、臭い。ウチナーグチで言うところの「シーカジャー」(腐った臭い)である。腐ってはいない。賞味期間は3週間もあるから、いろんなものがはいっているのだろう。
 この豆腐、私は柔らかさを出すため、においを消すため、買ってきた豆腐をカステラ一切れの大きさに切り、沸騰したお湯に入れぐつぐつ煮る。少しして、豆腐に割れ目が出てきたら、火を消す。それを適当な大きさに切り、おみそ汁にいれる。まあ、木綿に近い味にはなっている。外国で日本のそれと同じように作るのは手間ひまかかるのだ。
 最近、パリの日本人の間で話題なのが、定年退職した日本人男性が作った「木綿豆腐」。この男性も本物の豆腐が欲しいと、試行錯誤を重ね、今では日本食材の店で売っている。でも、私が店に行くころはいつも売り切れで、まだ食べたことはない。
(又吉喜美枝、フランス通信員)