フランスのいくつかの大企業では、2005年1月から求人の際、匿名の履歴書を受け付けている。
名前、住所、生年月日、国籍は不要。その応募者の専門知識、経験、人物そのものを見て、決めよう、というものだ。これは就職における機会均等、もっと生々しくいえば、人種の差別をなくしていくのが狙いである。
モハメッドやファティマという名からイスラム系、また、住所が18、19、20区だと移民の多い地区ということが分かり、企業側がそれだけで振るい落とすことがあるのだ。
ラシッドという青年は、大学学士課程修了(日本の大学卒)。彼は、面接に臨み、「ピエール」という名を使うことにした。2回はいい線までいった。3回目、“気が緩んだ”わけでもないが、名前を聞かれ、本名を言ってしまい、その面接はうまくいかなかった、という。
話は少しずれるが、この夏、テレビ界にちょっとした出来事があった。ある局の夜8時のニュースに初めて黒人のキャスターが登場した。ハリー・ロゼルマックがその人だが、彼はメーンキャスターが夏休みを取っている間だけの代役である。それが新聞や雑誌で取り上げられている。そういうこと自体が、フランスでの有色人種の状況をよく表していると思う。
(又吉喜美枝、フランス通信員)
【島人の目】匿名の履歴書
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琉球新報社
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