【島人の目】赤瓦の屋根


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 フィレンツェやベニスやローマなどの歴史的な建物の上には必ず赤い屋根瓦が載っている。強い陽光に輝く赤瓦は、しっくいの白い紋様こそ見えないが古き良き沖縄の家々の屋根をほうふつとさせる。赤い屋根瓦には暑さを和らげる実益のほかに、地中海のまぶしい光に最も良く映えて美しいという利点もある。観光が大きな産業であるイタリアにとっては街の美観を保つことは重要である。赤い瓦屋根はその観点からも大切にされている。
 観光を一大産業とする沖縄も島の気候や歴史にふさわしい赤瓦の屋根を復活させて、街の景観に気を配るべきではないか。すべての屋根を赤瓦で覆わなくても良い。屋根の一部を赤い瓦で造るだけでも沖縄らしい雰囲気と美しさが出ると思う。行政の力で瓦ぶきの家に補助金を出したり税の優遇策を取ったりしてもっと建設を推し進めるべきである。観光で生きていくためには少々コスト高になっても街の美観を演出しなければならない。
 古代ローマ帝国を有し、超一流のファッションやデザインを世界に発信するのがイタリアなら、沖縄は世界でも指折りの美しい海を有し、冬でも暖かい絶好の気候を持つ土地柄である。観光保養地としてはイタリアに勝るとも劣らない。
 街に沖縄らしい美しい景観を取り戻せば地元の心が豊かになる。それは島を訪れる人々の心を解かし、癒やしの島、観光の邦としての沖縄の価値はどんどん上がっていくに違いない。
 (仲宗根雅則、イタリア在住・TVディレテクター)