搾乳量18年で40%増 「牛群検定」が奏功


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(上)乳用牛1頭当たりの乳量の推移、(下)県内乳用牛飼養戸数と生乳生産量(クリックで拡大)

 県内乳用牛の1頭当たりの搾乳量が増加傾向を続けている。沖縄総合事務局によると、2011年の1頭当たりの搾乳量は1993年と比べ約40%増加、93年当時全国平均の80・5%程度だった搾乳量は11年度は96・5%と16・5ポイント伸びた。

県酪農農業協同組合(八重瀬町、新里重夫組合長)は、個体ごとに情報分析して適正な餌量などを把握する「牛群検定」を実施。乳量改善に効果を上げている。
 関係者らが1頭当たりの搾乳量の上昇に取り組んでいる背景には飼料価格の高騰などで県内の酪農家数、生乳生産量がともに減少し続けている状況がある。関係者らは生産者の所得安定を図り、生産量低下に歯止めをかけたい考えだ。
 牛群検定では、県酪農農業協同組合に所属する酪農家に専門の検定員が月1回訪問し、乳量や乳成分などを1頭ずつ調査する。農家はその結果を基に優良個体を選抜。雄と掛け合わせ、後継牛を育成する。それを繰り返すことで、優秀な乳用牛の確保を図る。
 県内乳用牛はこれまで北海道産が大半を占めていたが、飼料価格の高騰などで、約10年前から価格が上昇。県内で後継牛の育成が必要になり、同組合は04年から検定加入を推進。当時約20農家だったが、現在は組合70農家中48農家が検定を受ける。
 その結果、県内乳用牛の1頭当たりの乳量は、93年は5449キログラムだったが、年々増加。11年は7750キログラムで、同年全国平均の8034キログラムに迫るまでに改良が進んだ。
 1頭当たりの乳量で成果が出ている一方、課題もある。同組合によると、沖縄の亜熱帯性気候は乳牛にとって過酷な環境だという。そのため、県内では大型ファンや細霧システムなど暑熱対策にコストがかかる。飼料もほとんど県外から購入しているため、乳価が高くなってしまうという。
 11年の県内飼養戸数は、トウモロコシなど穀物価格の国際的な高騰などで93年から52・2%減の86戸。県内生乳生産量も、同年比22・8%減の2万7589トンにまで落ち込んだ。
 同組合の山内高志生乳検査課係長は「生産量をこれ以上は下げたくない。牛群検定をベースに農家の所得安定を図れば、新規就農にもつながる」と期待した。
 (長嶺真輝)