『俺物語!! 2』 アルコ・作画、河原和音・原作


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『俺物語!! 2』 アルコ・作画、河原和音・原作

イケメン→育メン→猛者メンの時代突入?
 こら! また勉強もしないでマンガばっかり読んで。ほら父さんに貸しなさい……ん? なんだこれは、勝新か? 『座頭市』か? ○……ってね~、全国のお父さんたちを混乱させかねない、異色のマンガがあるんすよ~。その名は『俺物語!!』。ニュースサイト「コミックナタリー」主催の「第1回 マンガ秋100」で、堂々の第1位を獲得した本作は、『別冊マーガレット』で連載中の、まさかの少女マンガなのです。

 主人公は剛田猛男。身長2m、体重120kg(いずれも推定)、驚異の高校1年生。気は優しくて力持ち、まっすぐで不器用で鈍感ゆえに、女子からは見向きもされない。が、男子からはモッテモテ。この物語はそんな猛男の恋に友情に一生懸命ッ!な全力コメディーなのです。
 数多の少女マンガの中で、なぜこの作品がこれほどに注目され、共感を呼び、「猛男にホレた!」と世の女子たちに言わしめ、「男ども! いいから黙ってこれを読め」と言わしめるのか。だってあーた、舞台は現代のニホンですよ。そこに、ジャパニーズ・オールドファッション・男おいどん。その違和感たるや、もはやSF。「ありえへんわ~」ですよ。ないない言いつつ笑って読み進め、笑いながらもなぜか徐々に心惹かれ、気づいたらあれ? あたし、泣いてる……ってこの展開。一体どゆこと!
 読み進めて思ったのは、『俺物語!!』という物語だけど、主人公はいつだって「俺」以外の人の力になろうとしているなあ、ということ。もちろん主人公は猛男で、猛男をとりまく恋と友情の物語なんだけど、彼はいつも周囲の人を想い、全力で助けようとする。それは家族や恋人や親友、だけじゃない。老人や赤ちゃんを連れたお母さん、子供たち、さらには猛男を「ギリギリ人類、ほぼゴリラ」(←言いえて妙)と嗤う女子高生まで。困っている人の力になりたいと願い、考えるより先に動く。猛男は「俺」のことよりも、周囲の人を想う力が、とっても強いんだな。
 そうですか。今、この話が受け入れられますか。もちろんこの作品自体も素晴らしい。笑えるし泣けるし、心が温かくなるし。でも、それ以上にいいなあって思ったのが、現代女子たちも、猛男のような男の子を美しいと、格好いいと思うんだなあ、っていうこと。クソ暑苦しくって古臭い。オシャレも知らないし、優しさとは一体何か、語れる言葉はきっとひとつも持ってない。それなのに、ただ目の前の人を想い、突き進む、恐れを知らない勇敢さ、あたたかさ、力強さを持っている。猛男に惹かれるわたしたちはきっと、すべての人を、人間という存在を、信じたいのかもしれない。ただ全力で。恐れを知らず。
 ……てなわけで『俺物語!!』現在第2巻が好評発売中ですよお父さん!
 (集英社 400円+税)=アリー・マントワネット
(共同通信)

俺物語!! 2 (マーガレットコミックス)
アルコ
集英社 (2012-08-24)