イーベック、うるま進出 年明け稼働、抗体開発を加速化


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 大手製薬企業と80億円以上の契約を国内で唯一複数持つ北海道大学発のバイオベンチャー、イーベック(札幌市、土井尚人社長)は、沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センター(うるま市)に沖縄研究所を設立、年明け以降に本格稼働させ抗体の開発促進に取り組む。

同社は独自技術で完全ヒト抗体を完成させた。外部委託だった抗体の性能評価を同研究所で実施することで、特許取得につながる高性能の抗体の開発を加速化させる。
 抗体は感染症やがんなどに対する分子標的治療薬として有望視される。沖縄研究所は抗体の性能評価のほか、北海道の素材を活用したバイオ、食品関連商品の開発拠点としても位置付ける構想。那覇空港を中継拠点(ハブ)とする全日本空輸の国際航空貨物事業を活用し、沖縄発商品のアジア各地への販路拡大を探る。
 抗体はネズミを試験として使った「マウス抗体」の作製技術は確立されているが、副作用の危険性が課題とされる。またヒト型抗体の開発も進む一方で欧米の特許で高額な特許料が活用への足かせとなっている。
 同社は独自技術で人の血液を由来とする完全ヒト抗体を開発。抗体医療の新規創薬に特化した製薬企業と連携、事業を拡大している。
 イーベックは2003年設立で、沖縄研究所は今年9月に開設した。今後は札幌研究所と同様に細胞培養、解析などの機器を整備するなどし規模を拡大する計画も持つ。土井社長は「沖縄は研究インフラが整備されている」とした上で、「北海道と沖縄は気候性の違いで、全く違う資産が多い。北海道から素材を持ち込み、沖縄で最終加工することができれば、付加価値が高く競争力がある商品開発が期待できる」と県内進出の背景を説明。「抗体の性能評価、開発だけでなく、北海道と沖縄の連動で、将来的に鮮度の高いバイオ関連商品をアジアへ展開できる可能性も高い」と意欲を見せた。(外間崇)