『東京建築 みる・あるく・かたる』倉方俊輔、甲斐みのり著


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『東京建築 みる・あるく・かたる』倉方俊輔、甲斐みのり著

みる・たべる・たべる、が私流

 建築には全く明るくないが、「建築好き」というのはなんだかかっこよくて憧れる。そんなエセ建築好きの私でも、フランク・ロイド・ライトの建物は好きだなと思ったり、街に埋もれているレトロな建物を見つけると嬉しくなったりする。

 ものすごく詳しくなりたいとは思わないけれど、基礎知識くらいは身に付けておきたいと思う、私のわがまま心に響いたのが本書。建築史家の倉方俊輔さんと、『乙女の東京』『乙女みやげ』など、乙女シリーズの著書を持つ文筆家の甲斐みのりさんが、2人で実際に東京の建築を見ながら、語り歩く様子が紹介されている。ともすれば硬くなりがちな建築学も、甲斐さんの乙女センサーにかかれば身近なものに。
 本書の中で紹介されているコースは6つ。お茶の水―神保町、向島―浅草、両国―深川、青山―表参道、上野公園、丸の内―日比谷と、お茶の水は「カラフル&味わい建築」など、それぞれのコースに設けられたテーマからしてためになる。知っている街並みの景色に新たな知識が付与されることで、世界が広がっていくわくわく感を味わえる。
 新聞っぽくも教科書っぽくもあるレイアウトがどこか懐かしく、学生時代に戻ったような気持ちでページをめくる。紹介されている建築写真がとても美しく、それを眺めているだけでも楽しめる。嬉しいのは、どこのスポットにも必ず喫茶店が紹介されていること。この心遣いが甲斐さんならでは。
 いま一番行ってみたいのは、東京スカイツリーのお膝元、向島―浅草コース。喫茶店カドの「活性生ジュース」が飲みたくて! もちろん、食のみに走ったわけではない。昭和遺産のような佇まいのこちらのお店は志賀直哉の実弟、志賀直三が設計した建築だそうですよ。
 (京阪神エルマガジン社 1400円+税)
(共同通信)
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 えとう・かんな 1980年生まれ。書籍編集を経て、雑誌編集の道へ。女性の興味・関心ごとを探る日々。好きなものは、こけしとおかし、お寺と仏像、お笑い全般。得意ジャンルは、雑学、ブーム、ゴシップ系。くだらないこと(もの)、大歓迎!

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