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人に嫌われる仕事の現場
はるかぜちゃん(春名風花)への殺害予告ツイートが世間を震撼させたことが記憶に新しいが、本書の著者である督促OLの榎本さんの仕事では、「今からお前を殺しに行くからな」といった脅し文句が日常茶飯事だというのだから恐ろしい。
督促OLというのは、カードなどの支払いが期日に行われないお客様に電話や書面で「入金のお願い」をする仕事だ。1時間に最低60本のノルマが課され、督促の電話をかけるも、海千山千の多重債務者が相手では、逆切れされてどなられたり、耳をつんざくような罵声、恫喝、ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせられたりする。
入社して半年で体重が10キロ減り、ストレス性のニキビが顔中にできたという著者しかり、心を病み、毎月誰かしらが職場を去っていくという、想像を絶するようなストレスフルな職場環境……。と、ここまで書いてきたが、これ、最初の数ページの話。既に腹八分目どころか、満腹である。これ以上読み進めていくことが不安になる。
社屋の前にガソリンがまかれていたことがあったり、「お前の会社に爆弾を送った」という爆破予告があったり、真っ黒な街宣車がやってきたり……。まるで映画のような、ウソみたいなホントの話が続く。
けれど、この著者、ただ者ではないのが、最年少で300人のオペレータを指示するチームに配属され、後々年間2000億円の債権を回収するまでとなること。そこで培ったストレスフルな仕事への対処法が語られる。
とにかく真面目に「督促」に取り組む著者の仕事ぶりと、その人柄がにじみ出ている一冊。「督促」というあまり知られていない職業については十分すぎるほどに分かったが、ストレス対応の指南書としては、私は読み解けず。むしろ、知られざるお仕事本として、興味深く読んだ。
(文芸春秋 1150円+税)=江藤かんな
(共同通信)
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えとう・かんな 1980年生まれ。書籍編集を経て、雑誌編集の道へ。女性の興味・関心ごとを探る日々。好きなものは、こけしとおかし、お寺と仏像、お笑い全般。得意ジャンルは、雑学、ブーム、ゴシップ系。くだらないこと(もの)、大歓迎!