平和の理念 継承を 「1フィート」活動終了発表


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解散を表明し、次世代の運動の広がりに期待を寄せるNPO法人沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会の福地曠昭代表(左から2人目)ら=27日、県庁記者クラブ

 来年3月の活動終了を表明しているNPO法人沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会(福地曠昭(ひろあき)代表)は27日、県庁記者クラブで会見し、3月15日に那覇市の八汐荘で開く解散総会で活動に幕を下ろすと正式に発表した。

 福地代表(81)は「これまでの運動の成果を生かし、沖縄戦の歴史的教訓を引き継ぐ新しい平和教育や県民運動が、若い世代を中心に展開されることを期待すべきだと考えた」と説明。平和の理念を継承する次世代が決意を持って運動の裾野を広げていけるよう望んだ。
 1フィート運動は戦争を知らない世代に沖縄戦の実相を伝えようと、1983年に始まった。県内外から寄せられた寄付で米国立公文書館などから沖縄戦の記録フィルムを買い取り、各地で上映会を開いてきた。解散の理由について、沖縄戦に関する公的機関が整備されたことなど、一定の役割を終えたとしている。
 これまでの寄付総額は8889万1870円、収集したフィルムは約11万フィート(約50時間)。会見で福地代表らは県民の運動への協力に感謝した。解散に伴い、フィルムは県公文書館へ、ガマの調査で見つかった遺品は県平和祈念資料館などに譲渡する方向で話を進めているという。
 石原絹子理事(75)は沖縄戦で戦争孤児になった。会見で「戦争で家族を失った悲しみや苦しみを嫌というほど体験した。若い人や子どもたちにそういうことがあってはいけない」と訴え「後輩たちにバトンタッチし、明るく平和な21世紀をみんなで築いていく気持ちだ」と力を込めた。

◆記録活用が課題 関係者
 沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会が活動を終了することについて、会の関係者や沖縄戦体験者などからは、残念がる声のほか、「この記録をどう生かしていくかが今後重要だ」と指摘する声があった。
 沖縄戦を研究する石原昌家沖縄国際大名誉教授は、同会の活動により「沖縄戦の体験を語らなかった人たちが、体験を語り始める機運が生まれた。(1フィート運動は)その後押しになった。沖縄戦の体験を継承する大きな役割を担ってきた」と意義を語る。「自衛隊を国防軍にしようという動きもある現在、若い人たちがこの成果を生かす活動をしてもらいたい」と望んだ。
 同会のフィルムと住民の証言を織り交ぜた映画「軍隊がいた島」「沖縄戦の証言」の監督を務めた謝名元慶福さんは「フィルムを取り寄せる役割は終わったということだが、米国の軍隊の視点で撮影した映像に沖縄の体験者の証言を突き合わせ、伝えていく作業は必要。日本が戦前に回帰するような方向の中、その仕事はより強く求められている」と語った。同会の上映会で体験を伝えたこともある安里要江さん(92)は「フィルムを集めることはとても貴重で良い活動だった。(活動終了は)もったいないと思う」と述べた。