心で演じること学んだ 「カラカラ」沖縄ロケ、工藤夕貴


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「世界の人々があこがれる沖縄の魅力を再発見できる映画になった」と語る工藤夕貴=那覇市の沖縄ハーバービューホテルクラウンプラザ

 昨年の第36回モントリオール世界映画祭で観客賞、世界に開かれた視点賞の2冠に輝いた、全編沖縄ロケのロードムービー「カラカラ」(クロード・ガニオン監督)が12日から那覇市のシネマQ、北谷町のミハマ7プレックスで沖縄先行公開される。

夫の転勤で沖縄に移住した主婦・純子役で主演した工藤夕貴は「自由に心で演じる、子どものころのような感覚を思い出させてもらった。とても大事なことを学ぶことのできた現場だった」と撮影を振り返る。
 役者の自主性を重んじるガニオン監督の撮影手法は、ハリウッドの現場も経験した工藤から見ても独特だという。「現場のニーズによって撮り方やせりふ、設定まで自由に変化する。形に縛られず、演じる側の気持ちを大切にする」と工藤。
 象徴的なのは今帰仁城跡での一場面。夫の健一(あったゆういち)に殴られ、家出した純子はピエール(ガブリエル・アルカン)の旅に同行する。ピエールと語り合う純子の携帯電話が鳴り、夫に優しい言葉をかけられる。当初は長ぜりふのモノローグだったが、純子の揺れ動く心境を克明に描くため、せりふを書き換えることになった。
 「自分のキャラクターに対する考えを監督にメールしたが、当日は天候との戦いで話し合えなかった」。だが監督は演技を工藤に一任。どんなせりふになるのか誰もわからないまま本番を迎え、気持ちのこもった演技で2テイクでOKが出た。「通常の映画撮影は無駄も多いが、監督は大切な部分に(遠回りせず)直接行ってくれる。撮影は楽しく、いい形で本番に入れ、大事な瞬間を逃すこともない」
 沖縄を初めて訪れたのは約25年前。撮影などで訪れるたびに変化を感じるという。「沖縄は悲しい歴史も経てきたが、現在は新天地として沖縄を選び、移住する人も多い。いい形で多様な変化を遂げたと思う」。沖縄での先行公開に「沖縄は沖縄の人々のものだが、世界の人々があこがれる場所でもある。その魅力を再発見できる映画になった。沖縄の人がどう受け止めてくれるか楽しみ」と語る。
 主人公の純子とピエールについて「当たり前のように生きてきた2人だが、沖縄で出会うことで狂っていた歯車がかみ合い、前に歩めるようになる。見た人は必ずどこかに共通点を感じてもらえると思う。生きるってそんなに悪いものじゃないなって思ってもらえたらうれしい」と語った。
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 舞台あいさつが12日午前10時と午後1時にシネマQで、午後3時半にミハマ7プレックスである。