県内の飲食店、海外に進出へ 沖縄売り込む


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 海外進出を目指す県内の飲食店の動きが相次いでいる。全日本空輸(ANA)の国際航空貨物ハブ事業を活用し現地の富裕層をターゲットにする企業や日本食ブームに合わせた形で中間層の開拓を目指す企業など、それぞれの事業拡大の場を海外に求めている。

◆「銀次」6月にタイ/10店舗目指す
 「目利きの銀次」や「生け簀(す)の銀次」など飲食店を経営する、みたのクリエイト(中城村、田野治樹社長)はタイの首都バンコクに進出する。2月に現地法人を立ち上げ、6月ごろにも出店する。徐々に拡大を図り最終的に10店を開店、売上高10億円を目指す。同社初の海外展開で、香港出店も検討しているという。
 みたの―は2007年設立で、「異空間和風料理 動く町」や「炭火炉端職人 いぶし銀次郎」などを次々と開店。現在、県内に飲食店13店を構える。
 誘客を図るため、北海道産の魚介類や鹿児島県産の黒毛和牛など、県外の産地から食材を取り寄せる“他産地消”を展開。客単価3千円前後に設定し、比較的所得が高い地元の客層をターゲットにした事業展開が奏功している。
 食材を自社トラックで輸送するなど独自の手法で経費節減を図る。昨年7月には卸事業部を設置し、県内のほかの卸会社や飲食店との取引も始めた。タイへの食材輸送は、ANAの国際航空貨物ハブ(拠点)事業を活用する計画だ。
 タイ1店目は銀次系の飲食店になる予定。外観やメニューはそのままに、現地の日本人や富裕層をターゲットにする。今後、現地採用のタイ人を来県させタイの言葉や日本語の語学研修を実施するという。
 田野社長は「東京も検討したが、市場拡大が著しい東南アジアがより魅力が大きい。沖縄に軸足を置くが県内の規模ではこのままだと社内で競合してしまう。事業拡大には海外展開が必要だ」と説明。飲食業界にとってもANAのハブ事業は大きな利点として「沖縄の企業が成功する可能性は十分にある」と意気込みを語った。(謝花史哲)

◆「りょう次」はカナダ/日本食人気追い風に
 県内で「居酒屋野郎 りょう次」やラーメン店「琉球新麺 通堂」など飲食店計11店を展開するオフィスりょう次(那覇市、金城良次代表)は18日、カナダで最大の人口を誇る都市トロントにラーメン店と居酒屋の両方を備えた店舗「りょう次」を新規オープンする。2013年は来客10万~12万人、売り上げは2億4千万円を目指す。
 同社は昨年6月、カナダに現地法人「りょう次オブカナダ」を設立して出店場所を模索してきた。店舗は延べ床面積約400平方メートルで座席数148席。内装は赤瓦やシーサー、琉球ガラスで飾り、「沖縄らしさ」を前面に押し出す。地下の約330平方メートルのスペースには、1年後をめどに自家製麺を作る加工施設を整備する予定だ。
 昼はラーメン屋で客単価1500円、夜はゴーヤーチャンプルーや泡盛を提供する沖縄料理居酒屋として同5千円ほどを見込む。同社によると、トロントは日本食ブームが到来、中間層をターゲットに十分な収益が見込めるという。
 島尻吉信専務は「食や文化など沖縄をどんどん売り込んでいきたい。沖縄を知り、沖縄に来てもらえば、地元への還元にもなる」と強調した。
 今後の展開については「お客さまの声があれば店舗増もあり得るが、まずはこの店舗を成功させたい」と力を込めた。