『写真集「STAND!」』 次世代への問い掛け


社会
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『写真集「STAND!」』國吉和夫著 photogenic persons peace・2500円

 「日本人よ!今こそ、沖縄の基地を引き取れ」。インパクトの強い写真ではじまるクニシカゾー(國吉和夫)写真集が昨年の暮れ、刊行された。タイトルは赤色の太字で「STAND!」だ。

 あの42年前のコザ暴動の日を思い起こしつつ、クジャーンチュ写真家-國吉の育った環境と、揺るがぬ立ち位置から強い意志力をもって発信された。復帰40年の節目の決意と、ある種の区切りを告げるかのように。12月20日、コザの街の夜の出来事であった。
 ページをめくりながら思った。300ページの分厚い本は思った以上にずしりと重い。米軍基地の内側と外側のさまざまな現場に足を踏み込み、四十数年に渡ってカメラのシャッターを押し続けてきた写真家の心情が重くのしかかってくる。濃淡の強いコントラストの写真は現場の空気までも写し取り、米軍演習は戦場さながらの匂いを充満させている。その一方では、状況にあらがい明確に意思表明する民衆の力強い姿があった。
 連続する写真群は、光沢のある上質紙に転写された、いわゆる写真集の画像ではない。墨色のインクで紙の芯まで染め抜かれ「オブジェ」としての存在を示している。場の状況に反応する自身の心象まで写し取った画像と言うべきか。基地の街で育った写真家のリアルな体験感覚が読者の身体をビリッと電流が走りぬけ、五感に触れる説得力あふれた写真集となっている。
 写真集の末尾に國吉は、知念ウシを聞き手に、次世代に訴えるように自らの生い立ちと写真家人生を吐露している。ウチナーグチを交えた心の底から出てくる語りは説得力がある。
 戦後67年、復帰40年、米軍統治時代を知らない世代、復帰後に生まれ育った若い世代の人たちはよく口にする。「生まれたときから基地はあったしー、米兵の友達がいるしー」「べつに問題はないんじゃない」と。
 67年におよぶ日米の軍事植民地構図の中で「異常な風景」があたりまえになり、フェンスが日常化し、依存、共存し、戦争に共犯しながら思考停止に陥っているウチナーンチュへ向けられた著書でもある。同時に次世代へ問いかける作品集となっている。(上原誠勇・画廊主)
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 くによし・かずお 1946年沖縄市(旧美里村)生まれ。70年~2006年まで琉球新報社カメラマンとして活躍。写真集に「基地沖縄」など。