抑えた所作 情感深く 佐藤太圭子師籍50年


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
創作「菊」を門下生らとともに舞う佐藤太圭子家元=浦添市の国立劇場おきなわ

 琉球舞踊「太圭流」佐藤太圭子家元の師籍50周年を記念した「第15回佐藤太圭子の会~華々の軌跡をたどる」がこのほど、国立劇場おきなわで行われた。

「太圭流」門下生や19年間指導した県立芸大での教え子ら各公演で活躍する中堅・若手舞踊家も数多く出演した。師匠免許を取得し半世紀の節目の舞台を彩った。
 佐藤が出演したのは古典・創作の4題。幕開けの創作「菊」は佐藤を中心に据え、「太圭流」門下生13人が取り囲むように舞った。扇を手に持つ踊り手の集団が広がったり、狭まったりと自在に移動しながら整然と舞う光景は鮮やかだった。
 「諸屯」は人間国宝(琉球古典音楽)照喜名朝一の歌三線に乗せ、内面に秘めた女心を表現。視線を落とし、思い詰めた表情での顎当てなど、抑えた所作に深い情感を感じた。
 創作「ぢゃんな節」(新垣義志作舞)も、抑えた所作の中でしなやかな手踊りを披露。創作「揺上(ゆりかん)」は地謡に人間国宝の富山清琴(地歌・三弦)を迎え、大和から琉球を訪れた人が帰国する際の送別の宴を表現した。暗闇の中で灯籠の明かりがともり、所作の一つ一つに惜別の念がにじんだ。
 「太圭流」門下生や県立芸大の教え子らは佐藤の多彩な創作を次々に披露。県立芸大出身者を中心とした中堅・若手の男性舞踊家14人で舞う「舟子(ふなく)」は圧巻。「えいやー、えいやー」と櫂(かい)を操り豪快に舞った。群舞の速い動きなどで所作がずれる例もあったのは惜しまれた。
 出羽、入羽を省き板付きで踊り始める「菊」、音楽をチェロや箏で奏でる「綾」など、従来の琉舞の構成と異なる創作を生み出してきた佐藤の作品の数々を披露した。
 入場料を県内の琉舞公演では高めの7千円に設定したことには、琉球芸能全体の価値への認識を底上げしたい意図もあるのではないか。創作も含め、従来の枠にとらわれない挑戦に今後も注目したい。
(古堅一樹)