組踊、専用舞台で追究を 沖国大特別研究


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研究上演用に設計した特設舞台で披露される組踊「執心鐘入」=13日、浦添市の国立劇場おきなわ

 沖縄国際大学の特別研究「沖縄の古典芸能を考える」の一環で組踊「執心鐘入」の研究上演やシンポジウムが13日、国立劇場おきなわで行われた。

島袋光晴伝統組踊保存会会長が指導した研究上演(企画・統括=狩俣恵一、舞台考証=宮城茂雄、詞章考証=西岡敏・宮城、所作考証=田場裕規、宮城)は実演家が演じやすいよう設計した特設舞台を活用。専用舞台の必要性を提起する公演となった。
 同研究は専用舞台がない中で組踊が受け継がれてきたことに着目。演じる実演家の意見を取り入れて上手、下手、橋がかりの3カ所から出入りする御冠船踊の形式で演じやすい特設舞台を考案した。
 立方が登場する際に斜めに歩み出る「角切り」がやりやすいよう、上手や下手の出入り口を舞台中央へ向けて斜めに設置。下手横に橋がかりも配置した。地謡席は、上手の出入りと重ならないよう右端に設けた。
 寺の場面で登場する鐘も工夫した。通常、鐘は客席から見えない部分が空いていて、そこから出入りするが、今回は完全に丸い鐘を使用した。宿の女役の宮城茂雄は、その鐘の中で鬼女へと変化した。
 台本は現在のほとんどの舞台で活用されている伊波普猷著「校註琉球戯曲集」ではなく、「尚家本組踊集(仮称)」(那覇市歴史博物館収蔵)に所収されているものを基に上演した。小僧の唱えに特色があった。
 シンポは「古典芸能の普遍性と組踊の特質」がテーマ。坂井音重氏(能楽師・観世流シテ方)、山本東次郎氏(大蔵流狂言方・人間国宝)、研究上演を指導した島袋会長、企画・統括の狩俣教授が登壇した。田場裕規同大専任講師が進行役を務めた。組踊と能・狂言との共通点などを意見交換した。
 基調講演で狩俣教授は「組踊は大きな劇場ではなく、圧縮された空間で緻密な細かい演技を学んでいくのが適しているのではないか」と、組踊専用舞台で緻密な古典芸能の所作を追究する必要性を指摘した。