県花卉(かき)園芸農業協同組合「太陽の花」(浦添市、宮城重志代表理事組合長)が、限られた面積でも高収入が見込める草花の栽培を模索している。広大な農地や高価な栽培施設の確保が難しい新規就農者を増やすことが狙い。さらに沖縄が全国の一大産地であるキクと一緒に栽培し、品種に多様性を出すことで農家の経営安定にもつなげたい考えだ。
背景には農家の高齢化がある。現在同組合の平均年齢は60歳前後。9割超の農家が栽培するキクは単価が30~50円と安い一方、需要が大きく、大規模な生産体制が求められる。しかしピーク時は千人近くいた組合員は現在680人ほどにまで減少した。
担当者は「キクの栽培は多くの人員が必要で、初期投資も大きく新規就農は難しい。限られた面積で、ある程度の収入を見込める草花の栽培から始めれば、就農もしやすい」と説明する。
注目するのは白やピンク、青など多彩な色を持つトルコキキョウ。県外ではバラの代用品にもなり、結婚式や葬儀などで高い需要があるという。
苗1本が約25円なのに対し、販売価格は1本170円ほどを見込む。組合ではこれまで3人の農家が生産していたが、本年度新たに4人が栽培を開始した。
16日には県外の市場担当者を招き名護市で勉強会を開催。栽培技術や県外に出荷する上で求められる形質などを議論した。
一方、近年国内には単価が100~130円ほどの台湾産トルコキキョウが増加。12~3月には高いシェアを占める。同組合は冬春期でも温暖な沖縄の気候を生かし、卒業・入学式や母の日などがある2~5月の出荷を目指す。台湾産との出荷時期をずらしてシェアを確保したい考えだ。
キクの出荷時期は11~3月がピークで、出荷は長くても5月まで。キクのみではそれ以外の時期は無収入で、台風などで生産量が減少すれば生活は厳しくなる。近年、夏場はゴーヤーなどの野菜を栽培する農家も増えてきているという。
組合ではほかにも、単価が約250円のユリの栽培も開始している。
担当者は「従事者が減少する中で県の花卉産業を支えていくにはいろいろな選択肢が必要。年間を通して栽培すれば、農家の経営も安定する」と力を込めた。(長嶺真輝)