芭蕉使い仏具作成 愛知の小原智司住職


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
通常は動物の毛で作られる払子を芭蕉で作り、平良美恵子理事長(右)に紹介する小原智司さん=22日、大宜味村喜如嘉の芭蕉布事業協同組合

 【大宜味】仏教で重視される教えのうち「不殺生」(生き物を殺さない)を実践しようと、曹洞宗西光寺=愛知県豊橋市=住職の小原智司(ちし)さん(68)が、大宜味村で採れる芭蕉の繊維を使った仏具「払子(ほっす)」を作った。

22日に大宜味村喜如嘉の喜如嘉芭蕉布事業協同組合(平良美恵子理事長)を訪れた小原さんは「『殺す』でなく『生かす』ことが仏教の教え。このような形で実践でき良かった」と貴重な芭蕉の提供に感謝した。
 払子は、たいている香の匂いを広げるのに使う。通常は馬の毛などで作られるが、小原さんは10代から「動物を使うのは教えに反する」と感じていたという。払子以外にも、蚕を使う絹でなく、水蓮(すいれん)の茎の繊維でけさをあつらえたこともあった。
 2012年1月に沖縄を旅行した時に芭蕉布と出合い、独特の光沢に一目で「払子にしたい」と感じたという。喜如嘉を訪れて繊維を譲ってもらえるよう交渉し、約300グラム(芭蕉60本分)を分けてもらい、地元の職人に注文し、2本が出来上がった。
 芭蕉は成熟するのに3年かかり、1本から採れる繊維は約20グラムと貴重。「不殺生を貫く」という小原さんの姿勢に共感し、特別に提供された。平良理事長は完成した払子を見ながら「役に立てて良かった」と満足そうに話した。
 小原さんは、曹洞宗開祖の道元が植物のシュロで作った払子を使っていたことも挙げ「清浄(しょうじょう)を保つには動物のものよりいいと思う。不殺生の教えを伝えていきたい」と喜如嘉の厚意に感謝した。