【島人の目】自分の人生を切り開く


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 2ベッドルームの家に8人が住み、宿題をする場所も時間もない環境を恥と考えたことはなく、むしろ金を稼いで家族を支えることができる自分を誇りに思い、笑顔を絶やさず、明るく振る舞う少年がいた。メキシコ生まれで幼少のころにアメリカに移住、10代のころからアルバイトをして貧しい家庭を支えた。

 リトル東京で商店を経営する日系人マサの目にとまり、その商店で働くようになって2人の間柄は友情へと発展していった。マサは少年に言った「普通の人ができないことを目指せ」と。
 そんな出会いから30年がたち、少年はカリフォルニア大学バークレー校、プリンストン、UCLAを卒業、弁護士を経て、リトル東京を管轄区とするロサンゼルス市議に選出された。
 その人の名はホーゼイ・ウイザー市議。昨年12月15日付の羅府新報「磁針」欄に「アメリカンドリーム」と題した中村良子記者のコラムに目が奪われた。
 アメリカンドリームの実現、それは黄金の輝きを放ち、万人を魅了する言葉だ。
 一人の沖縄出身の女性に会ったのは2003年だった。「マイケル・ジャクソンやジャネット・ジャクソンみたいに歌って踊れるエンターテイナーに憧れてロサンゼルスへやってきました。私の夢はアメリカでないと実現できないのです」とその女性はインタービューに答えた。その時すでにジャネット・ジャクソンのオーディーションに受かっていた。
 再び彼女に会ったのは4年後の07年、彼女の結婚式だ。その時女性は「原宿ガールズ」の一員として人気歌手グエン・ステファニーのバックアップ・ダンサーとして活躍していた。その2年前にはブリトニー・スピヤーズのバックアップ・ダンスもしていた。
 その人の名は仲宗根梨乃さん(33)。現在は韓国や日本人歌手などの振り付けで多忙だ。昨年10月下旬にはNHKのショー番組にゲストとして出演、AKBの振り付けなどで張り切っている梨乃さんを見て思った。「アメリカンドリームの追求はだいぶ板についてきたな」と。(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)