麩から医薬品原料 甲南化工、でんぷんを泡盛粕発酵


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微生物発酵の機器や県産バイオマスの可能性に期待する楽隆生課長代理=うるま市の沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センター

 食品添加物や医薬品製造を手掛ける甲南化工(大阪府、亀澤誠社長)は13日までに、沖縄伝統食麩(ふ)の副産物でんぷんから、医薬品や液晶などの原料として活用が見込まれる高機能化学物質を生産する技術を開発した。「R-3-ヒドロキシ酪酸」という物質で今年春ごろから販売を計画。当面は試薬素材としての活用を見通し、年間1千万円の売り上げを目指す。

 県工業技術センターと共同で、泡盛蒸留粕(かす)やサトウキビの糖蜜、麩のでんぷんなど県内食品製造業にとって後処理が課題となっていた副産物を有用物質に変える研究開発に取り組み、実用化のめどがついた。県産未利用バイオマスの有効活用へ弾みとなりそうだ。
 活用する資源は麩の生産過程で不用となったでんぷん。糖化で生成したグルコース(ブドウ糖)を発酵処理し、生分解性プラスチック原料「ポリ(R-3-ヒドロキシ酪酸)」の製造に成功した。発酵処理では泡盛製造で廃棄される泡盛蒸留粕を使い、微生物発酵を実施した。
 さらに化学的な分解により高純度の「R-3-ヒドロキシ酪酸」を効率的に生産する技術を確立。液晶・農薬素材、化合物の誘導体、体外診断薬、抗生物質などへの用途が期待されている。甲南化工によると、副産物のバイオマスを原料にしていることから低コスト化が実現し、市場開拓も見込めるという。
 同社はうるま市の沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センターに入居し、県産業振興公社の「おきなわ新産業創出研究開発支援事業」の支援を受け研究を進めてきた。研究開発では生分解性プラスチックの生産にも取り組んでいるが、生産能力や採算性などの課題に直面。プラスチックの商品化については大型のタンクが必要なことから共同事業者を探すなど継続して事業化を模索する。
 同社開発担当の楽隆生課長代理は「県産資源は有用な素材になる高い可能性を持っている。研究を進め、課題を解決し事業化につなげたい」と話した。
 (謝花史哲)