洋上遭難後に沖縄戦 上江洲さん、5歳の戦場体験発刊


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【沖縄】太平洋上と沖縄で戦争を体験した上江洲清さん(73)=うるま市平良川出身、兵庫県尼崎市在住=がこのほど、自らの戦争体験をまとめた「戦場の小さな証人―太平洋と沖縄での戦争体験」を発刊した。

上江洲さんは「当時5歳だった私でも、激しい戦争を生き抜くことができた。命を粗末にしてはならない。小さな子どもにも生きる力があることを伝えたい」と語っている。
 上江洲さんは1939年、テニアン島生まれ。44年、日本へ引き揚げる途中、船が米軍の攻撃を受けた。救命ボートで海をさまよった末、陸軍徴用船に救出された。
 台湾、神戸を経て父の実家がある具志川に戻った上江洲さんは45年、沖縄戦に巻き込まれ、弟を失った。
 戦場で発した「怖いよう、怖いよう」という言葉をキーワードに、悲惨な戦場を生き延びた幼少時の自身の体験を描いた。後書きで上江洲さんは「本書の目的は戦争を知らない人に戦争の怖さを伝え、平和のありがたさを知ってもらいたいということに尽きる」とつづっている。
 上江洲さんは高校卒業後、家族でブラジルに移住し、さまざまな仕事をこなしながら移民社会を生きてきた。13年にわたり琉球新報ブラジル通信員を務めたこともある。2002年から日本に居を移し、戦争体験の語り部活動を続けている。
 今回の出版は、上江洲さんの証言を聞いた人たちから寄せられた手紙などが契機となった。「戦場の小さな証人」は106ページ、500円。大阪府のドニエプル出版から発行。県内では沖縄市のキャンパスレコードで販売する予定。

二つの戦争体験をまとめた「戦場の小さな証人」
上江洲 清さん