悲喜劇で女優陣好演 沖縄俳優協会


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(左から)自殺したハンドー小(赤嶺)を発見し、嘆くマチー小(知念)と船頭主(瀬名波)=24日、浦添市の国立劇場おきなわ

 沖縄俳優協会(春洋一会長)の沖縄芝居公演が24日昼夜の2回、国立劇場おきなわで行われた。歌劇「伊江島ハンドー小」(真境名由康作)と現代劇「美人の妻 情の妻」が上演された。悲劇、喜劇の2作で女優陣の存在感が光った。「伊江島ハンドー小」は女優だけで演じ、ベテラン瀬名波孝子演じる情け深い船頭主役などが味わい深かった。

 夜公演を取材した。「伊江島―」は伊江島の青年・加那(中村志津子)が船で遭難し流れ着いた国頭で美女ハンドー小(赤嶺啓子)らに救われる。2人は愛し合うが、加那は黙って伊江島に帰る。ハンドー小は加那の愛を信じ、船頭主(瀬名波)の計らいで伊江島へ向かう。
 前半はハンドー小と、いとこマチー小(知念亜希)のめりはりの効いた掛け合いが印象的。赤嶺は加那に捨てられて傷心のハンドー小を声のトーンを落とし表現。知念はハンドー小を心配そうに見つめつつ明るく励ますマチー小を透き通った歌声を響かせて演じリズムの強弱をつけた。
 女性では異例の挑戦となる船頭主役の瀬名波が登場した瞬間、客席は拍手で沸き、期待の高さがうかがえた。安定感のある声の張りと、ハンドー小を見守る何気ないしぐさや視線などで細やかに表現。男性が演じる場合とは違った奥深い優しさと正義感を感じた。
 再会した加那にハンドー小が迫る場面は、赤嶺が髪を振り乱しながらつかみ掛かり熱演した。
 加那や、加那の父である島の地頭代主(宮里良子)らにひどい仕打ちを受けたハンドー小は自殺する。せめて線香を上げてほしいと加那の家を船頭主とマチー小が訪ねる場面は船頭主役の瀬名波と、悪役ぶりが際立つ地頭代主役・宮里のやりとりも興味深かった。
 「美人の妻―」は、美人ではないが情のある妻グジー(平岡絵津子)と仲むつまじく暮らすカマデー(知名剛史)は、学生時代の同級生・正男(普久原明)と妻勝負をする。ドタバタの末、カマデーも正男も妻の代役を立てていたことが明らかに。ポーポーハンシー役の与座喜美子、モーサー役の真栄田文子らベテランが舞台を引き締め、カマデーの友人マチュー役の泉賀寿子、その妻メーヌー役の島袋ゆかりらもコミカルな演技で笑いを誘った。
 地謡(歌三線=金城清徳・仲宗根盛次・仲本亜寿香、箏=米須弥生、笛=仲田治巳)は各場面を情感を込めて歌い、演奏した。
 一般社団法人へ移行後の初公演となった沖縄俳優協会。観客層の拡大へ向けた事業を検討する中、例えば観客へ配布するチラシやパンフレットには作品名や配役などだけでなく、あらすじ・見どころなどを視覚的に紹介してはどうか。2作とも興味深く鑑賞できただけに、沖縄芝居を見る機会が少ない人にも魅力を感じてもらうための何らかの工夫がほしい。(古堅一樹)