【島人の目】キシュカート外間久美子/戦犯とお国柄


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 四月二十三日、日本人が五千人ほど住むドイツのデュッセルドルフでも中国人による反日デモがあった。幸いに過激な行動はなく、静かなデモであったという。
 ヒトラーのユダヤ人大虐殺はあまりにも有名である。ドイツでは終戦記念日、収容所解放記念日、ヒトラーの命日など、事あるごとにメディアが取り上げ、残虐なシーンを幾度も報道する。また、学校でもしっかりと教えられ、ディスカッションがなされる。

 この取り上げられ方は、ただ事ではない。とにかく、繰り返し、繰り返し取り上げられる。そして、何度も政治家たちによってドイツが犯した、消すことのできない罪の告白と謝罪が繰り返される。
 「過去にもう謝罪したのだから」という日本の政治家たちと大きな違いを見る思いだ。日本では一九七八年に靖国神社にA級戦犯が合祀(ごうし)されたという。八五年には当時の中曽根康弘首相が戦後初めて公式参拝。それ以後、首相の靖国神社参拝のたびに中国の抗議が続く。
 ドイツで、ヒトラーやナチス高官を祀(まつ)り拝むことなんてあり得るだろうか。ナチスのカギマークも、右手を斜め上にまっすぐ挙げてのあいさつも禁止されているくらいであるからあり得るわけがない。首相だけでなく、政治家が、いや国民がA級戦犯を祀ってある場所を拝むことがドイツ人にはまず理解できない。ましてや、心に深い傷を持つアジアの人々に受け入れられるはずがない。
(ドイツ通信員)