翻弄の時代描く 沖縄芝居実験劇場「世替わりや―」


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結婚が決まった亀寿、マヅルと一緒に踊りだす村人ら=23日、那覇市のタイムスホール

 琉球処分の下で翻弄(ほんろう)される沖縄社会を農民や士族を通し描く喜劇「世替わりや世替わりや」(大城立裕作、幸喜良秀演出、北村三郎指導)が2月22~24日、那覇市のタイムスホールで行われた。

沖縄芝居実験劇場(玉城盛義代表)など主催。1982年に初演、87年には東京で上演し紀伊國屋演劇賞特別賞を受けた同団体の代表作を若手やベテランが一体で好演し、次代へ継承する意気込みを感じる舞台となった。
 豪農の地頭代・大門の主(玉城盛義)は息子・亀寿(金城真次)を下級士族・真栄城(宇座仁一)の娘マヅル(伊良波さゆき)と結婚させたい。そのために大門の主は上級士族の奥間親方(嘉数道彦)に士族の身分を金で買いたいと相談。息子・樽金(佐辺良和)の公金横領をごまかすためにお金が必要な奥間は上納の倍増を条件に筑登之の身分を約束する。
 大門の主は琉球処分により、王府には権限がないことに気づかずに「筑登之の身分を得た」と威張って真栄城へ辞令書を見せる。言葉巧みに大門の主をだます奥間親方役の嘉数、奥間の言葉に言いくるめられる玉城の掛け合いは息ぴったりに会場を沸かせた。
 明治政府、清国の間で揺れる沖縄の世相を反映させつつ、随所に笑いを取り入れて士族・農民の人間模様を描いた同作。互いに好きな村娘ウサ小(知花小百合)と亀寿、樽金の三角関係を金城、知花、佐辺がユーモアたっぷりに演技した。不思議な予言をするユタハーメー役の阿嘉修も短い登場ながら印象的。樽金の祖母役を演じた中曽根律子は、自然体でベテランの存在感を発揮し舞台を引き締めた。
 終盤に結婚が決まった亀寿、マヅルと一緒に踊りだした村人らが一瞬、オスプレイの騒音に驚く場面は前後の流れからするとやや唐突な印象もあった。その半面、今とつなぐ視点は意欲的な試みで興味深く、より自然に現代の世相も反映させた再演も見たいと感じた。
(古堅一樹)