「美風華」2歌劇 迫力、変化富む展開


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父の敵・田名大親を討ち、手を合わせる(右から)千代松(嘉陽田)と野村(具志)、加那美(知念)=8日、沖縄市民小劇場あしびなー

 「乱菊」は南風原城の若按司・千代松(嘉陽田)が唐へ留学中、父・南風原城按司(知念勝三)が後妻の眞市金(小嶺和佳子)や臣下・田名大親(当銘由亮)の謀略で殺害される。

 田名大親役の当銘は主君を亡き者にして城を乗っ取る悪役ぶりを豪快に演技。田名役の当銘と南風原城按司の忠臣・野村里之子役の具志清健が激しく言い合うやりとりは迫力があった。
 按司殺害の場面で眞市金役の小嶺は葛藤をにじませる。一度はためらいつつも、田名から強引に促されて按司を刺し殺した。
 田名が城を乗っ取り、南風原城按司の忠臣・野村里之子(具志清健)は邪魔者として城から追放される。3年の留学を終えて帰国した千代松は、気が狂ったふりをして敵討ちの機会をうかがう。
 婚約者の加那美がいくら問い掛けても、千代松は幼い子どものような受け答えで「ふりむん」ぶりを貫く。やりきれなくなった加那美がその場を離れた後、千代松役の嘉陽田は着物を抱き締めて悲しげな表情を浮かべ、複雑な心中をうかがわせた。
 加那美役の知念亜希は安定感のある歌声が印象的。千代松に必死に話し掛ける加那美と、狂気のふりを貫く千代松のギャップが切なさを感じさせた。千代松が野村らと共に城へ乗り込み、田名を討ち取る場面は、客席が拍手で湧いた。
 その半面、細部の仕上げで気になる点もあった。役者によっては見どころでせりふが詰まり言い直す場面や役柄・状況に応じた感情表現に物足りなさを感じる場面もあり、惜しまれた。
 沖縄芝居界全体として、観客層の拡大が課題の一つとなる中、若手自ら主宰する美風華公演。若い世代へも沖縄芝居の魅力を伝える工夫も含め、今後も継続した取り組みに期待したい。(古堅一樹)