【チャイナ網路】イチバンのネーミング


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 商品のネーミングは、ビジネスの成否を左右する重要な“看板”だ。日本企業も並々ならぬ力を注いでいる分野だが、こと中国市場となると同じ漢字圏だと油断してか、失敗する例が少なくない。こう指摘するのは、中国人ジャーナリストの莫邦富氏だ。
 氏が挙げる例がビールの「一番搾り」。中国で発売したものの売り上げが思うように伸びなかった。氏に言わせれば中国語の「一番」は「ざっとする」くらいの意味。「最初」や「最高」という意味はない。「ざっと搾った」ビールなど売れるはずもなかった。
 市場のとらえ方も、中国なら性別や年齢ではなく、所得層にこそターゲットを絞るべきだと氏は主張する。中国を一つの国と考えるな。北京、広東、上海、台湾の四つ言語圏と思えというのも面白い。
 実は中国ではコケた「一番搾り」だが、台湾では大ヒットした。一番を「一級棒」と書いてイチバンと読ませる外来語があるほど日本語に対する受容度が高いことが勝因だろう。それにしてもこの訳語、一級「棒(バン)(すごい)」と意味も音も伝えるとは、なかなかの名訳だ。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)