地下水保全の拠点に 宮古総実高に有機肥料工場が完成


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このほど完成した生徒らが開発した有機肥料(バイオ・リン)を製造する施設=5日、宮古島市平良字下里の第2農場

 【宮古島】旧宮古農林高校環境班の生徒らが開発した資源循環型の有機肥料(バイオ・リン)の製造工場がこのほど、宮古総合実業高校(伊志嶺秀行校長)の第2農場に完成した。年度内に生産開始予定で、年500トン~千トンの生産を見込む。施設完成により大量生産に向けた土台が整った形で、肥料の利用拡大と地下水の水質改善、農家のコスト削減にもつながりそうだ。同校は「地下水保全の拠点施設にしたい」と意気込んでいる。

 窒素、リン酸、カリウムは肥料の3要素といわれる。このうちリン酸は、土壌中のミネラル分と結びつきやすく、植物が吸収する効率が悪い。リン酸を賄うため化学肥料を多用した結果、窒素が土壌中に過剰に蓄積、浸透して地下水の汚染につながっていた。
 バイオ・リンは、環境班の生徒らが地下水の硝酸性窒素汚染を研究する中で開発したもの。製糖工場から出る副産物のバガスや廃糖蜜など島内で出る有機系廃棄物と、土壌微生物(リン溶解菌)を混ぜ合わせることで、土壌中に蓄積したリン酸を再び植物が吸収できるようになる。バイオ・リンは市場の化学肥料の半値以下という。
 有機肥料の開発で、旧宮古農林高校環境班の生徒らは04年“水のノーベル賞”ともいわれるストックホルム青少年水大賞を受賞している。
 伊志嶺校長は、生徒の研究が施設の立ち上げなどで地域貢献していることに「周囲の生徒にも夢と誇りを持つことにつながる」と期待した。
 施設には製造設備だけでなく、講習室も兼ねた「分析室」も設置。生徒や地域を対象にしたバイオ・リンの講習を行えるようにした。
 生徒の指導にあたる前里和洋教諭は「研究を通し発想力、分析力をつけられる。生徒の進路実績向上につながる」と意気込んだ。