前里教諭(宮古総実)が最優秀 下中記念財団表彰


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「生徒と共に探求してきたことが評価されたのはうれしい」と語る前里和洋教諭=10日、宮古島市の宮古総合実業高校

 【宮古島】下中記念財団(東京都)はこのほど創立50周年記念表彰者を発表し、宮古総合実業高校(伊志嶺秀行校長)の前里和洋教諭(48)が最優秀賞に輝いた。長年にわたり生徒とともに有機肥料開発など地下水保全に着目した研究を続けたことが評価された。

前里教諭は「宮古島の地下水保全に取り組んだ200人近い生徒たちが受賞したものと、生徒たちを誇りに思う」と語った。
 前里教諭は前身の宮古農林高校の生徒らと1997年ごろ、宮古島の土壌中に化学肥料由来のリン酸が多く蓄積していることを発見。窒素、リン酸、カリウムは肥料の3要素といわれ、農作物の生育に重要だ。リン酸は土壌中のカルシウムと反応し、農作物が吸収しにくい状態に変化していた。それを補うため追肥され、リン酸がどんどん蓄積する一方、水に溶けやすい硝酸態窒素は地下に浸透し、地下水を汚染する悪循環を解明した。地下水に依存する宮古島では影響が懸念されていた。
 これを原点に研究を広げ、リン酸を再び植物が吸収しやすい状態に変化させる有機肥料を開発し、普及が始まっている。サトウキビ栽培の空白期間に、土壌にたまった硝酸態窒素を効率よく吸収するソバを植える取り組みも進めている。
 有機肥料の開発で同校環境班の生徒らは2004年、“水のノーベル賞”ともいわれるストックホルム青少年水大賞を受賞した。
 前里教諭は「地下水保全は大きなテーマ。環境教育の一環として生徒と共に探求してきたことが評価されたのはうれしい」と強調。「いくら金がもうかるものを開発しても、地下水を汚染しては価値がない。環境循環型の産業づくりに貢献する基礎研究をしていきたい」と決意を新たにした。
 同財団は学校教諭による優秀な研究に助成を続けており、表彰はことし初めて行った。過去10年間に助成を受けた51人を対象に論文を受け付け、29人から応募があったという。