「夢実現」題材に映画 精神障がい者ら制作


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短編映画「夢どぅ宝」について語る古謝哲也監督(左から2人目)や出演者ら=11日、沖縄市の新垣病院

 【沖縄】沖縄市の新垣病院に通う精神障がい者らが自分の夢を語り、実現させる22分の短編ドキュメンタリー映画「夢どぅ宝」を制作した。映画の上映会が11日、同院であり、家族や友人ら約100人が鑑賞に訪れた。通所者で監督、撮影、編集、アニメ制作を務めた古謝哲也さん(44)は「精神障がい者に誤ったイメージを持つ人も多い。映画を通して障がい者が暮らしやすい社会に変える助けになればいい」と語る。

 映画はデイナイトケアの通所者で昨年8月に設立した「映画同好会」が約7カ月かけて制作した。警官、看護師、プロゴルファーなど、通所者ら30人が心に秘めていた「かつての夢」を語り、夢実現へ向け通所者が動き出す内容だ。
 人気男性アイドルに会いたいという伊礼春枝さん(51)は映画の中で、アイドルのお面を着けた同院職員と1日デートを楽しんだ。伊礼さんは上映会の座談会で「すてきなケースワーカーさんがアイドル役をしてくれて、満足している」と振り返った。
 古謝さんは高校生のころ、漫画家を目指して上京しようと那覇空港にいたところ、統合失調症を理由に家族に止められた経験を持つ。夢を心に秘めながら、大工やクリーニング業などの仕事を転々とした。現在は電子書籍発刊や専門誌に漫画の連載を持つなど精力的に活動している。
 同院でデイナイトケアを担当する目取眞恵子課長は「患者の中には周囲から夢を否定され、挫折を経験した人もいる。映画を通して患者自身が自分を認め、自信を持つきっかけになった」と語る。
 自身も統合失調症を持つ多和田明美さん(42)=那覇市=は映画を見て「病気になって全てが終わったと思ったけれど、夢を自分の生きる糧にしたいと思った」と語った。
 題名の通り「夢は宝」と語る古謝さん。上映後は「何らかの形で表現することを続けたい。皆さんも夢を持ち続けてほしい」と語り掛けた。映画は4月に東京で開かれた第4回ラブストーリー映画祭に出品され、応募50点から上位8点に選ばれた。今後も県内で上映会を数回開く予定だ。(大城和賀子)