『琉球諸語の復興』 しまくとぅば、地位回復目指し


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『琉球諸語の復興』沖縄大学地域研究所編 芙蓉書房出版・2800円

 しまくとぅば復興に対する編集者のほとばしる情熱と心意気が感じられる1冊である。土曜教養講座がすでに500回を超えるに至り、それを精力的に企画・運営してきた沖縄大学地域研究所が編集した。第1部琉球諸語概説、第2部琉球の島々の唄と言葉、第3部琉球諸語の復興〈シンポジウム〉で構成されている。

これまで、うちなーぐちをはじめとする“しまくとぅば”がいかにも日本語の中の方言の一つであるかのような受け止め方をされてきた。しかし、2009年のユネスコによる危機言語地図の発表以来、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語、八重山語、与那国語の六つが琉球諸語としてみなされ、それぞれが日本語やアイヌ語と同等の扱いを受けたことから、さらなるしまくとぅばの地位回復を狙いとしている。
 第1部の琉球諸語概説は、著者のほとんどが20代後半から40代前半の若手研究者によるものである。危機言語としての琉球諸語の状況と課題がまず分かりやすく解説され、続いて六つの言語の概説が収録されている。何よりも若手研究者がかかわっていることが頼もしい。従来の琉球方言ではなく、琉球諸語としての学問的な裏付けをさらに発展させていただきたい。そのためにも、言語事実を収集・分類し記述するだけでなく、言語を体系として捉えることへの配慮が十分になされるべきだと思われる。
 第2部では、与那国、八重山、宮古、沖縄出身の4人の名うての唄者たちが一堂に会し、島唄を歌い、島唄についてそれぞれのしまくとぅばで語っている。付録として、島唄としまくとぅばによる語りがDVD(107分)に収められているので、多様なしまくとぅばの世界の一端が繰り広げられていて、なかなか興味深い。さらに、琉球民謡を分類する試みも見られる。
 第3部は、少数言語であるカタルーニャ語やハワイ語の言語復興事例を検証し、琉球諸語の復興に役立てようとする試みであるが、いくつかの問題点が収録されている。
 (宮良信詳・琉球継承言語会会長)