【チャイナ網路】逃げるなら中国


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 「力覇」グループの王又曾会長が昨年末、突然会社更生手続きを行い、年明け早々系列銀行の取り付け騒ぎに発展した。驚いたのはグループ各社の社長たちだ。独裁的支配で知られた会長は、王国終焉(しゅうえん)の宣告まで全くの独断だった。
 捜査は始まったばかりだが、調べてみると70ある子会社の多くが資金を引き出すためのペーパーカンパニー。実態はまさに砂上の楼閣(ろうかく)だった。資金の流出先はまだ不明だが、その一部は最初の逃亡先となった中国である可能性が高いと地元マスコミは報道する。
 近年海外に逃亡した経済犯には、中国にせっせと投資し、旗色が悪くなると中国に逃げ込むというパターンが少なくない。中台間には刑事犯の引き渡し協定はあるが、実際に引き渡された例は数えるほどだ。
 「力覇」も中国各地に400億円以上を投資する外資企業。実態は不明だが個人的な投資もあるという。台湾の指名手配犯も海峡を越えれば高額納税者というわけだ。台湾の引き渡し要請もむなしく、容疑者は2週間のバケーションを楽しんだ後、平然と次の逃亡先へと旅立って行った。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)