連載「国依存の誤解を解く」〈1〉経費は類似県の7割


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 15日に復帰41年を迎える。沖縄は復帰後、政府による振興開発政策が進められた一方、財政依存度が高まったが、「国の補助金を一番多くもらっている」「経済構造は基地収入に偏っている」といった誤解がいまだに多い。日本地方自治研究学会長の池宮城秀正・明治大政治経済学部教授に分析してもらった。

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 復帰40年余が経過し、沖縄は米国統治下の軍事基地依存型輸入経済から財政依存型経済へ代わり、公的部門の割合が高まった。一方、広大な米軍基地は変わらず、自立的発展の足かせとなっている。基地の存在を背景に国庫支出金が傾斜的に配分されているが、財源補填の実情は一般的に適切に理解されていない。
 沖縄のような低所得県の経済や財政を論じる場合、全国水準と比較して劣位性を強調するのは地域経済の実情を見誤る恐れがある。沖縄県財政を財政力指数0・3未満の類似県(総務省分類)などと比較し、実情を明らかにしたい。類似県とは財政力の弱い順に、島根、高知、鳥取、秋田、沖縄、鹿児島、徳島、長崎、岩手の9県である。
 国と地方の財政関係を解説しながら、沖縄県財政の歳出・歳入、地方交付税・国庫支出金、内閣府沖縄担当部局予算、基地関連収入と市町村財政について概観する。以下、会計年度などは断りがない限り、2011年度である。
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 都道府県の11年度歳出額合計は50兆9658億円、類似9県平均は6399億円、沖縄県は6145億円である。沖縄の歳出規模は47都道府県中30位で、9県中5位。人口は142万人で、9県平均109万人を大きく上回るが、財政規模は下回っている。
 主要な歳出科目の構成比を見ると、沖縄は借金返済費に当たる公債費を除いて全国や類似県の平均を上回っており、教育費や民生費などの財政需要が相対的に大きい。総務費や衛生費、商工費、警察費などはおおむね全国や類似県より低い。
 教育費の割合(全国12位)が比較的大きいのは児童生徒の比率が高いことが要因だが、小中高校の在学者1人当たり教育費では全国、類似県をかなり下回る。民生費は全国3位で、人口構成や失業率などを反映して児童福祉費(1位)や生活保護費(4位)の割合が高いが、老人福祉費(44位)は低い。
 道路、住宅、公園など公共施設整備に要する土木費(10位)は全国、類似県を上回っているが、歳出構成比の高い自治体は主として大都市圏だ。農林水産業費は8・4%。うち農業基盤整備などの農地費(3位)が5割を占める。全国と類似県は林業費が農林水産業費の約3分の1を占める。
 各歳出科目の人口1人当たり金額を求めると、沖縄の43・2万円は全国の40・2万円を若干上回るが、類似県58・7万円の約7割にすぎない。沖縄の公共サービスは、ほぼ全国水準のコストで実施されているのであり、各科目の金額を見ると一層明確だ。すべての歳出科目について、人口減少が進行している類似県より少なく、全国に比べても総務費と衛生費以外は沖縄の方が低額である。
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池宮城秀正氏(明治大教授)
 いけみやぎ・ひでまさ 1948年、本部町伊豆味生まれ。琉球大法文学部教授を経て明治大政経学部教授。経済学博士。専門は財政学、地方財政論。日本地方自治研究学会会長。著書に「地域の発展と財政」「琉球列島における公共部門の経済活動」など。

人口1人当りの歳出額
池宮城秀正氏(明治大教授)