連載「国依存の誤解を解く」〈4〉低コストで効率運営


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 沖縄県の振興開発は復帰以降、歴史的、地理的、自然的、社会的な特殊事情に起因する不利性の点から、地域振興法の一つである沖縄振興特別措置法に基づき実施されてきた。
 内閣府沖縄担当部局の予算は、国庫支出金や国直轄事業関係費などを沖縄県について一括計上した予算である。県と市町村財政に対する国庫支出金、国直轄事業関係経費と別に存在するわけではない。ピーク時に比べると半減だが、2012年度2937億円(前年度比28%増)、13年度3001億円(2・2%増)と増加した。12年度に創設された沖縄振興交付金制度は沖縄振興事業を県が自主的に実施できる一括交付金制度である。使途自由度の高い国庫支出金だが、一般補助金の地方交付税とは性格が全く異なる。

 沖縄振興交付金は(1)ハードの公共投資交付金(2)ソフトの特別推進交付金に区分される。(1)は全国並びの地域自主戦略交付金の拡充で、原則各省庁に移し替えて支出され、補助率は従前通り高率補助が適用される。(2)は原則内閣府で執行する沖縄独自制度で、画期的だ。補助率は10分の8。全国に先駆けて導入されたソフト分野の補助金制度をいかに生かすかが、今後の大きな課題であろう。県当局の実施能力が試されている。
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 米軍関係受取(軍用地料、軍雇用者所得、米軍への財・サービス提供など)は1972年度に県民総所得の15・5%を占めたが、09年度は5・2%に低下している。観光収入9・6%の約半分であり、県経済に与える影響は小さい。米軍や自衛隊の基地があるのは21市町村。10年度基地関連収入は249億円で、全市町村の歳入合計額に占める割合は3・8%にすぎないが、市町村で大きな差異がある。
 基地関連収入は市町村税の代替的性格の基地交付金・調整交付金(68・8億円)、生活環境整備など迷惑料的収入(79・9億円)、市町村所有の地代などの財産収入(100・6億円)に区分できる。外部不経済に対する補償は軍事基地が存在するゆえの財政需要に対する国の支出金であり、本来はない方が良いと言えよう。基地関連収入は、国から恩恵的に交付される収入ではないのである。
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 沖縄県の財政は全国平均との差異は大きいが、財政力指数0・3未満の類似9県などと似た構造にある。自主財源比率が全国水準を超えるのは大都市圏などの11都府県だ。地方圏が全国並みになるのは至難の業で、全国平均と比較すると焦燥感や劣等感に苛まれる。
 ただ人口一人当たり経費をみると沖縄は全国水準に近く、類似県のほぼ7割の金額。つまり類似県に比べて低コストで行財政を実施している。本土と離れ、かつ多くの離島を抱えるが、本島中南部に人口の8割以上が居住し、行財政は効率的に実施されている。
 沖縄県財政は弾力性を示す経常収支比率や、収入に対する借金返済の割合を示す実質公債費比率、将来支払う借金の割合を示す将来負担比率などが都道府県平均を下回っている。これらの指標からおおむね健全であるといえる。(おわり)
(池宮城秀正氏、明治大教授)