琉球新報社と日本農業新聞、十勝毎日新聞社(北海道)は4日、環太平洋連携協定(TPP)をめぐる3紙経済担当部長による座談会を東京都内の日本プレスセンタービルで開いた。TPPは関税撤廃で打撃を受ける農業だけにとどまらず、医療や雇用、食の安全など国民生活の幅広い分野に関わるとの認識で一致。
政府からの情報開示や国民的議論が不十分な中、TPPを検証し、地域社会や主権を守るための報道を強化することを確認した。
座談会は、日本が7月23日からTPP交渉に参加することになったことを受け、急きょ開いた。
琉球新報社編集局経済部の外間聡部長、日本農業新聞編集局農政経済部の吉田聡部長、十勝毎日新聞社の國井正行編集デスクが出席。(1)TPPの本質や地域への影響(2)各社のTPP報道姿勢(3)世界の貿易秩序や経済連携の在り方―などをテーマに議論した。
外間氏は、甘味資源や畜産関連の関税撤廃が、サトウキビや畜産を基幹農業とする県内離島への影響を指摘。「国境離島や遠隔離島の生活を支える農業が壊滅すれば地域社会の崩壊につながりかねない。それこそ国益を損なう」と述べた。
吉田氏は「TPPの最大の問題は国家主権が脅かされることだ」と強調。「国民の命や暮らしを守るための法制度や規制も、企業の自由な経済活動の下に緩和・撤廃が迫られる。企業の利益が国民の命や暮らしよりも優先する社会は許されない」と訴えた。
國井氏は、十勝地方について、小麦や酪農など6品目の関税撤廃により関連産業も含めて5037億円の影響額が出るとの道の試算を紹介。十勝全体の産業産出額の4分の1に当たるとし「地域経済への影響は計り知れない」と話した。