『華麗なるギャツビー』 原作に忠実なのに古臭さが微塵もない


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 『ロミオ+ジュリエット』『ムーラン・ルージュ』『オーストラリア』と、一昔前の時代を舞台にした古典的な物語を、スタイリッシュで洗練された映像で描き続けるバズ・ラーマン監督。20世紀のアメリカ文学を代表するスコット・フィッツジェラルドの名作を3D映画化したこの新作もそうで、「宮殿のような豪邸で夜ごと豪華絢爛なパーティーを開く謎の富豪を、ディカプリオが演じている」と聞けば、他の監督の名前は浮かばないのではないだろうか。

 それでも本作は、見る者の予想を超える驚きに満ちている。トビー・マグワイア扮する隣人の視点から富豪の素性と目的に迫っていく物語は、その骨組みばかりかディテールまでも原作に忠実なのに、古臭さが微塵もないのだ。それは、原作自体が時の風雪に耐える力を備えていたことも大きいが、それ以上に、当時の流行作家で若者にとってのカリスマだったフィッツジェラルドが醸し出していたはずの時代との相性のようなものを、現代的な映像に翻案できているからだろう。バズ・ラーマンの“天才性”に圧倒される。
 とはいえ、絢爛豪華さは3Dではどうしても目減りしてしまうし、せっかくの美しい構図も台無しなので、できれば2D版で見てほしい…と言いたいところだが、バズ・ラーマンの3D表現への思い入れも伝わってくるので、痛し痒し。いっそ、両方見るしかないかも。★★★★★(外山真也)

 【データ】
監督:バズ・ラーマン
出演:レオナルド・ディカプリオ、トビー・マグワイア、キャリー・マリガン
6月14日(金)から全国公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山 真也