擦れ違う現代人 「ないちゃーず」12年ぶり再演


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「ないちゃー」を演じる(左から)幸地尚子、桃原和希、泉川慧太、嘉手納良智と、うちなーんちゅの「仲村渠」を演じる田原雅之=11日、那覇市のシアターテン

 劇団「シアターテンカンパニー(仮称)」の公演「ないちゃーず」(増田静作、田原雅之演出)が7日から11日まで、那覇市のシアターテンで行われた。

前身である「劇團塚山公園!」時代の作品を再演するシリーズの第2弾。県外から沖縄に移り住んだ「ないちゃー」とインターネットという二つの鏡を通して、つながりを求めながらも擦れ違い、さまよう現代人の姿が浮かび上がった。
 出演は田原、嘉手納良智、宮城愛未、泉川慧太、大山瑠紗、幸地尚子、桃原和希、与那嶺優佳、伊良波若菜。舞台はある居酒屋。県外から沖縄に移り住んだ4人が月1回集まる。4人は、沖縄の情報を紹介するサイトを通じて知り合った。サイトの管理人である福岡(嘉手納)は、マンネリ化してきた会合を活性化させようと、うちなーんちゅをまねて模合を始める。
 福岡はサイトを訪れる人を模合に呼び込もうと躍起になるが、目の前の仲間には興味を示せない。模合が一巡したとき、北前(泉川)がこれまでの不満を語り、いびつな人間関係が露呈する。「沖縄まで来たのに、まだ何か探さなくても。ネットやってると、ずっと探し物してるみたいで」と福岡を諭す北前。続けて「なんでみんな沖縄に来るのかな」とつぶやく。
 田原は、途中から模合に加わるうちなーんちゅの仲村渠を怪演した。だが、コミュニケーションがうまくとれないのは、うちなーんちゅもしかり。「内地から来た人は観光客気分が抜けないんですね。逃げるっていうか、帰る場所があるから」。仲村渠は、福岡らを傷つける言葉を無意識に繰り返す。
 ネットで知り合った者同士が実際に集まる「オフ会」や、掲示板に書き込む「カキコ」など当時最先端だった言葉が懐かしく響く。だが、それらが「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」などに置き換わっただけで、ネットがコミュニケーションに活発に利用されている状況は変わらない。むしろ拡大している。県民と県外の人々の間にある微妙な壁を象徴する言葉「ないちゃー」も生き続けている。本作が描くひずみは、初演から12年が過ぎた今、より重く感じられた。(伊佐尚記)