タイワンハブ、生息域が拡大


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 【名護】生態系や人に被害を及ぼす恐れのある特定外来生物に指定されているタイワンハブが、県衛生環境研究所の2012年調査で、名護市の国道58号より南側の大北地区で初めて捕獲されたことが、26日までに分かった。

1993年の初確認以来、名護市と恩納村でタイワンハブの生息域が年々拡大しており、衛生研は一括交付金を活用した「危険外来種咬傷(こうしょう)対策モデル事業」を2012年度から開始した。13年度は駆除方法を確立するための実験を始める。
 タイワンハブはこれまで名護市北西部から本部町、今帰仁村の一部で捕獲例があった。12年は過去の調査で例がない名護市の国道58号より南側、大北地区など住宅地や商業施設に近い草むらのわなで捕獲された。恩納村南部にも生息域が広がり、米軍嘉手納弾薬庫地区にも生息しているとみられる。生態系への影響は、現時点で不明だ。過去に11人が咬傷被害を受けているが、いずれも助かった。
 県衛生研の寺田考紀主任研究員によると、わな1台で1カ月に何匹のタイワンハブが捕まるかを示す「捕獲率」が、名護市内では1カ月0・5~0・6だった。沖縄本島中南部に仕掛けるハブのわなは0・1で、名護市におけるタイワンハブの生息密度が高い可能性を指摘した。タイワンハブの毒性はハブと同じくらいで、治療薬が共通するため、かまれた時の対策は整っているという。だが、寺田主任研究員は「市街地の、生活圏のすぐ隣にいる」と注意を促す。
 現状を踏まえ、県衛生研は名護、恩納でモデル実験を近く開始する。実験ではわなを設置する密度や複数の形状を組み合わせ、効果的な方法を探る。寺田主任研究員は「将来は駆除マニュアルを作ることが目標だ。そのために自治体の協力も欠かせない」と話し、捕獲に向け地元と連携しながら進める考えを示した。

<用語>タイワンハブ
 中国大陸南部から台湾にかけて生息する。沖縄には1970~90年代に見せ物や薬用として輸入された。平均的な体長は80~90センチ。夜行性で、枯れ葉に似た模様のため見つけるのは難しい。

タイワンハブ(県衛生環境研究所提供)