【チャイナ網路】忘年会の「無情鶏」


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 旧正月も近づき、台湾には「尾牙(ウェイヤー)」(忘年会)の季節がやってきた。どこの会社でも大宴会を開き、豪華な景品を用意し、時には社長自ら歌い踊って社員の労をねぎらう。中国大陸では失われてしまった習慣だが、台湾の商工界では今でも広く行われている。
 旧暦の毎月2日と16日、商家が福徳正神に商売繁盛を祈ることを「做牙(ツオヤー)」という。その夜には奉公人や取引先に供えたごちそうを振る舞い、日ごろの労をねぎらった。「尾牙」とは本来その年最後の「做牙」という意味だ。
 「尾牙」は1年の総決算でもある。必ず供されるゆで鶏の別名は「無情鶏」。頭を向けて置かれたら最後、年明け早々にも荷物をまとめて出て行かなければならなかった。
 暇を出された奉公人が、私物の布団を丸めて荷造りをする姿が、イカが丸まる様子に似ていると、今でもクビにすることを「イカをいためる」という。労働者の権利が法で守られるようになった今も「無情鶏」は姿を現すが、生殺与奪の権は奪われ、ただただ天を仰ぐばかりだ。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)