琉球の器楽曲、後生に 普久原恒勇


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「各楽器の個性を生かして作曲した」と語る普久原恒勇=沖縄市の普久原音楽事務所

 作曲家・普久原恒勇が1981年に発表した詩曲「響(とよむ)」をCD化し、5日にマルフクレコードから発売する。

沖縄市民会館のこけら落としに合わせて作曲し、同年に日本コロムビアからLP盤が発売されていた。音楽配信が普及し「将来的にCDはなくなる」とも言われる中で、普久原は「演奏者が忘れてしまえばなかったことになってしまう。今のうちに残しておかなければならなかった」と32年ぶりに再音源化した意義を語る。
 「響」は天地開闢(びゃく)をテーマにした民族音楽。琉球王朝をイメージした典雅な旋律の前奏曲で始まり、天地が分かれるさまを表現した序章を経て、神々に「おもろ」を奉納する第1章、人々の暮らしを照らす太陽と月を描いた第2章と続く。第3章は「エーファイ」というイザイホーの唱えも登場。第4章は三絃(さんしん)による「ゆがふう」などで構成する。終曲「まつり」は神々への祈りをテーマとした。
 普久原は「琉球音楽の中でも優れた古典音楽は確立されたが、器楽曲が極端に少ないのは不可解だ。世界の民族音楽の中で器楽曲を持たないものはない」と強調する。「謡の供(うとぅむぐゎー)に甘んじていた楽器たちに新たな命を吹き込むため、各楽器の個性を生かして作曲した」
 LP盤のライナーノーツには、民族音楽学者の小泉文夫も原稿を寄せた。81年の初演以降、89年に那覇市民会館で開かれた公演「文化の和合」で再演。2012年に舞踊組曲「あまゆ・沖縄」として島袋君子振り付けで演じられている。
 今回のCDは01年から今年にかけて録音。演奏は初演時に演奏した「響の会」。コンサートミストレスの翁長洋子(ソプラノ箏)をはじめ、三絃、笛、哨吶(ガク)、木管、胡弓、太鼓などの奏者が参加した。普久原は「楽器ごとに慎重にレコーディングした。これまで演奏を耳にしたことがなかった人や若い人にも聞いてほしい」と語る。(CDは2000円)。