沖縄史教育「不十分」75% 悩む高校社会科教員


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 琉球新報は5月23日から6月14日にかけて、高教組の協力を得て、県内の高校に勤める社会科教員に対し、沖縄の歴史教育に関するアンケートを実施した。134人の回答者のうち75・3%が「十分には教えられていない」「教えられていない」と回答した。

「教師として、もっと教えたいが、物理的に時間がない」との声が多く、教育課程が決められている現場だけでは解決できない現状が横たわる。沖縄戦や本土復帰、オスプレイ配備、普天間飛行場移設問題など、沖縄の現代史や沖縄が置かれている現状などについて、試行錯誤しながら生徒に伝えようとする教員の姿が浮き彫りになった。
 「沖縄の歴史的な節目について、十分に教えることができているか」との問いに対し、回答者の75・3%に当たる101人が「十分には教えられていない」「教えられていない」と回答した。「沖縄の戦中・戦後史を教える際に、課題はあるか」と複数回答で求めた問いには「準備や授業を実施する時間が足りない」が114人と最も多く、学習指導要領やカリキュラムとの兼ね合いで、沖縄史を十分に教えられない現場の様子が明らかになった。
 沖縄の歴史的な節目について「十分教えられている」「教えられている」と回答したのは32人で全体の23・8%にとどまった。「分からない」との回答も1人(0・7%)あった。
 課題については、最も多かった「時間が足りない」に次いで、「自身の知識が不足している」73人、「教材などが不足している」32人、「教室内外で教えづらい雰囲気がある」6人、「どう教えていいか分からない」4人と続いた。「その他」と回答した22人からは「米軍基地問題について、保護者が軍雇用員という生徒に対しての授業の進め方」や「由美子ちゃん事件などはつらすぎて説明ができない個人的弱さ」「平和教育と政治問題を同等視し、敬遠する傾向がある」などの意見が上がった。
 「もっと教えたい」との声の他、課題克服には「教員免許を取得する際に大学(大学院)で琉球・沖縄史を学ぶようにする」「小中高大学をつなげる視点が必要」などの提案もあった。
――――――――――――――――
<教えた内容>「沖縄戦」「復帰」「普天間」多い
 過去5年以内に授業で教えたことのある戦中・戦後史について複数回答で求めた設問では100人以上の教員が「沖縄戦」「本土復帰」「慰霊の日」「サンフランシスコ講和条約」を授業で教えたことがあると回答した。「オスプレイ配備」や「普天間飛行場移設問題」の時事問題なども約3分の2の教員が授業で教えており、準備や授業を実施する時間が足りないと悩みながらも、沖縄史を生徒に伝えようとする教員の姿がうかがえる。
 同設問の回答では「沖縄戦」が118人と最も多く、「本土復帰」(112人)、「慰霊の日」(111人)、「サンフランシスコ講和条約」(105人)と続いた。
 「沖国大ヘリ墜落事故」(90人)、「オスプレイ配備」(88人)、「『集団自決』(強制集団死)」(86人)、「普天間飛行場移設問題」(86人)なども、約3分の2の教員が授業で取り上げている。
 「その他」の教員19人は、「戦時中の愛楽園の様子」「占領下の政治の仕組み」「高江のヘリパッド建設反対」などの回答が見られた。

教える際の教員の課題(複数回答)
沖縄の戦中・戦後史について、過去5年以内に授業で教えたことがあるものは