領土解決、教育から 日・台・韓研究者、共通教材作成へ


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琉球大学の学生たちに講義をする楊素霞副教授(右)=6月27日、西原町の琉球大学

 尖閣諸島や竹島をめぐる領有権問題が国際的な注目を集める中、「海洋領土紛争」をテーマに、日本、韓国、台湾の研究者が共同で中学生向けの共通教材を作るプロジェクトが始まっている。研究者は「生活者」や「生活圏」の視点で「国境」を捉えることを提案。教材を各国の教育現場で活用することで、関係国の若い世代が共通の歴史認識を持ち、平和的共存につなげることを狙う。

各研究者は共通教材の作成に向け3カ国で大学生を対象に教材を考える講義を3月から実施。学生の声も取り入れながら、意見の違いをどう乗り越えるかを考える挑戦が国境を越えてスタートした。
 同プロジェクトを進めているのは、琉球大学の山口剛史准教授、韓国の建国大学校の朴三憲(パクサムホン)副教授、台湾の南台科技大学の楊素霞(ヤンスシャー)副教授の3人。今後、中国側の声も反映させ、プロジェクトを広げたい考えだ。
 3カ国の大学生を対象にした講義では、各国の教科書の領有権問題に関する記述や「固有の領土」に関する考え方の違いなどを紹介し、国境を越えた“市民”として問題を捉え、対話する大切さを説いている。
 各国の学生からは、領有権問題解決には「持続的な交流と対話が重要」「互いの立場を十分理解し、歴史的、客観的判断の下で合意に達するべきだ」との意見が出た一方、「より強く所有権を主張するべきだ」と政府に求める意見も出た。
 研究者らは6月26日、沖縄キリスト教学院大学で市民学習会を開き、講義内容の紹介や成果を報告した。台湾の楊副教授は「台湾の教科書からは紛争の実態を認識することができない。(台湾の人々の)尖閣問題に対する認識は、政府やメディアによってつくられる」と指摘した。
 韓国の朴副教授は「危機に陥った政治家が領土問題を利用し、私たちが振り回される」と話し、国の枠を超えて対話をすることの大切さを強調した。
 山口准教授は「歴史や領土認識がどのように平和的共存につながるのか、紛争があるとするならばどう解決するのかを、子どもたちは中学から学ばないといけない」と意義を語った。
 プロジェクトは、韓国の「アジア平和と歴史研究所」が事業主体となり、東北亜歴史財団独島研究所の後援を受けている。(仲宗根祐希)
英文へ→Japanese, Taiwanese and South Korean researchers to create shared teaching materials