雄大に、繊細に、圧倒的に 武蔵野音大ウインドアンサンブル


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武蔵野音楽大学ウインドアンサンブルの演奏会で巧みな独奏を聞かせるトランペット奏者のクリストファー・マーティン。指揮はレイ・E・クレーマー=13日、沖縄市民会館

 武蔵野音楽大学ウインドアンサンブルの沖縄公演(武蔵野音楽大学、同大同窓会県支部主催)が11日に浦添市てだこホール、13日に沖縄市民会館であった。沖縄公演は24年ぶり2度目。

世界初演となるJ・ジルー「ブックマークス・フロム・ジャパン」は、浮世絵を題材に日本の風土を色濃く描いた。レイ・E・クレーマー(インディアナ大名誉教授)の卓越した指揮の下、クリストファー・マーティン(シカゴ交響楽団首席トランペット奏者)の硬軟巧みに繰り広げるトランペット独奏と、吹奏楽の絶妙な調和に来場者を引き込んだ。
 沖縄市民会館の演奏は日本初演となるP・ロスマン「モニュメント・ファンファーレ・アンド・トリビュート」で幕開け。「ブックマークス―」は、クレーマーが同楽団とともにジルーの曲を日本で紹介していることへの感謝を込め、ジルーが日本を題材に書き下ろした6楽章で構成する曲。第1楽章は曲が進むにつれて雄大さを増す「富士山」、第2楽章は歌川広重の浮世絵を題材にした民謡風の「日本橋」。さざ波から大波までを繊細に表現する第3楽章「神奈川沖浪裏」、打楽器の連打が圧倒的な存在感を示す第4楽章「浅草金龍山」、一転してピアノとハープ、フルートで静かに始まる第5楽章「蒲原 夜之雪」と続く。第6楽章は「箱根」。険しい山あいを縫うように走る山道と、その上を流れる人々の営みを木琴と管楽器の掛け合うめまぐるしい展開で描く。
 八木澤教司「眩(まばゆ)い星座になるために…」は打楽器とホルンの音色で華やかに始まり、打楽器をフルに使ったコーダで幕を下ろす壮大な曲。五つの名曲の旋律を使ったジルー「ファンタジー・イン・フレンチ」は中盤で顔を現す、クロード・ドビュッシーの「ベルガマスク組曲第3番 月の光」の旋律が幻想的な光景を描く。
 K・ヴァルツィック「トランペットとウインドアンサンブルのための協奏曲『ガウチョ』」は、3種類のドラムを中心に奏でるユニークなリズムの第1楽章で導入。第2楽章は叙情的で、歌うようにドラマチックな掛け合いが、マーティンのトランペット独奏と伴奏の間で交わされる。再び火のように燃えさかる第3楽章で締めくくる。
 D・フロイントの「ファイブ・エリザベサン・ダンス」なども日本初演され、2013年度全日本吹奏楽コンクール課題曲の参考演奏もあった。
(宮城隆尋)